年寄りの冷や水といわれようと「冷酒と親の説教は後で効く」と信じて。
古希を過ぎて、今更、親の話もないのだが。
いや、古希を過ぎたからかも知れないが、「冷酒と親の説教は後で効く」とは
よく言ったもので、若い人たちに向かって「ふと漏らす」言葉って、
身体のどこかに潜んでいる「親から受けた薫陶」だったりすることが多い。
取分け、我が親父殿は、新聞記者だったせいか、
「物事を斜に構えてみる癖」があったようで、「権力者には鋭い視線を浴びせた」
「強き者が弱き者をないがしろにすることには、厳しかった」私がどの立場に立つのか、
その根本は、そんな親父殿の生き方に教わったのかも知れない。
「人は己より強き者に挑むことによってのみ磨かれる」と「俺がやらねば誰がやる」
そんな気概も教わった。そして何よりも「何事も始めた以上は爪を立ててでも
最後までやれ、諦めたらあかん」とも。そんな説教から、何か壁にぶつかった時、
いつも「諦めたらあかん」を思いだします。20年ほど前に徒然を綴ったメモをまとめて
文庫本「諦めたらあかん」を上梓したこともあります。
最近の新聞、夕刊が如何にも読み応えがあって、捲るのが楽しいと、
つくづく思っているのだが、朝日新聞の夕刊、木曜に「一語一会」なる特集があります。
5/30付では、元NHKの記者で現テレ朝のコメンテーターを務める、
ジャーナリスト氏の「父からの言葉」を紹介しています。
小学生低学年の頃、親父殿と鮎釣りに。ふと見上げた空に「鷹」が。
「飛んでる」と呟くと、親父殿「タカはなぁ、獲物が大きかろうと小さかろうと、
渾身の力で捕まえるんだ」「岩に爪を立てろ」とぼそりと漏らした親父殿の言葉が
ずーっと印象に残り、折に触れ、時に触れ、思い出し、今では人生の羅針盤のようにと。
ジャーナリスト氏は65歳。私は古希。同じ時代の空気を吸って生きてきたのだが、
親の教えがともに……一度始めたら中途半端はあかん「岩に爪を立ててでも」あきらめるな。
得るものが、何かではない、常に「岩に爪を立てる」思いで全力でぶつかれ、と、
偶然だが、実は、この世代、大概が何事も「石にかじりついて」でもやり通せと、
ニュアンスの違いはあっても、親に、先生に、先達に教わってきたのではと思う。
時代は移り変わり、「爪を立てたら痛いじゃないか」なんて、茶化し、
「無理は無理」ほどほどになんて思う若者が増えたようだが、
「冷酒と親の説教」は後から効いてくるはず。年寄りの冷や水は諦めてはいけないと
夕刊の特集を読みながら、思う。Goto
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