「景気は緩やかに回復している」実感はないが。
政府が7月の月例経済報告で景気判断を据え置いた。そして、2020年6月から続く今回の景気拡大局面が74カ月となり、戦後最長だった「いざなみ景気」の73カ月を超えたと、暫定的に示した。
神武景気、岩戸景気、いざなぎ景気、いざなみ景気――。さて、この74カ月の景気は何と名付けられるのだろうか。正式認定は2年後だ。
しかし、正直なところ、私には実感がない。
もちろん、数字を見れば理解はできる。コロナ禍で大きく落ち込んだ企業収益は、その後の経済活動再開で急回復した。
財務省の法人企業統計では、全産業の経常利益は2020年度の62.8兆円から24年度には114.7兆円へと過去最高を更新した。春闘の平均賃上げ率も3年連続で5%台を維持し、人手不足を背景に賃金も上向いている。
統計だけを見れば、「景気拡大」と判断するのは間違いではない。
だが、一方で、食料品をはじめ物価は上がり続け、今年の値上げ品目は1万8千品目を超えた。家計は苦しい。中小零細企業は価格転嫁に苦しみ、人手不足にも悩み、利益を確保するのに四苦八苦している。
ここに、統計と実感の大きな隔たりがある。
数字に嘘はない。しかし、数字だけでは測れないものがある。それは、汗水流して働く一人ひとりの暮らしであり、地域で必死に経営を続ける中小企業の現実である。
景気循環の認定は、経済指標をもとに有識者会議が機械的に判断する。それは必要な作業だろう。しかし、人間学の視点に立てば、数字だけでは経済は語れない。経済の主人公は統計ではない。「人」である。
企業利益が過去最高でも、働く人が豊かさを実感できなければ、それは本当の景気回復とは言い難い。景気とは、人々の表情が明るくなり、将来に希望を抱き、地域に活気が戻ってこそ実感できるものではないだろうか。
戦後最長という記録は立派である。だが、私が待ち望んでいるのは、統計上の最長記録ではない。
日本中が「本当に景気が良くなった」と心から喜び合える日である。そこまで到達して初めて、この74カ月は歴史に残る景気拡大だったと言えるのではないだろうか。Goto


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