空間に曼陀羅が浮ぶ。
兄弟のいない私には、そのお蔭で(多分そのお蔭)とても、多くの先輩、友人、後輩に恵まれている。「人の世 幸不幸は 人と人が 逢うことから 始まる よき 出逢いを」とヘッドにしたためた、和紙の便箋で、毎月レターを頂く先輩が千葉にいる。
始めてお目に掛って、何年になるだろう。多分、20年では足らない。毎月のレターもかれこれ、十年は頂いている。月々の文通は、今年の4月、十数年ぶりにお逢いしたにも拘わらず、空白の歳月をぶっ飛ばした。文章のやり取りとは、不思議なものだ。
愛読する「文芸春秋」にあさのあつこさんがシリーズで「おとなの絵本館」を書いている。1月号で9回になる。軽妙なタッチで様々な絵本を紹介、彼女の人柄が慕ばれ、本屋に立ち寄ると思わず、「これが、彼女が紹介してくれた絵本か。」と手にする。
作者、著者との出逢いも、人の世の出逢い。そのお蔭で、絵本の素晴らしさを知った。全国、地場産業の振興に力を入れているが、どこも厳しい状況だ。岐阜県の多治見市、陶器の産地。その振興に「絵本」が一役かっている。
絵本のタイトルは「ちゃわんいっかのあさごはん」(多治見美濃焼卸センター協同組合発行)。内容は、家族があさごはんを確り食べて、幸せになる話。この絵本を読んで聞かすと、幼児や子供が朝食を食べるようになると評判。お母さん達に喜ばれている。
絵本に登場するちゃわん一家は毎年開催される「茶碗まつり」のマスコットキャラクター。組合では「マイはし」ならぬ、この絵本を題材に「マイちゃわん」ブームに火が付けばと目論んでいると聞く。絵本が地場産業を復興させるとなれば、夢が膨らむ。
その先輩(古希を過ぎられたと伺った)が、今月のレターとともに、講談社発行の絵本「おじょうさまうさぎに気をつけろ」を送って頂いた。氏の甥が絵を担当とのこと。力強い筆使い。子供たちを引きつける絵だと感心した。
絵本は小さな世界の内側に無限の宇宙を秘めている(あさのさん)。殺伐とした人の世、数字を追い求め、ややもすると、己を見失う。そんな年の瀬に、良き出逢いの先輩が、幼子の心をを揺さぶる「絵本」投げ入れてくれた。その豊かで、贅沢な空間に、曼陀羅が浮ぶ。
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