てぬぐいと枡(ます)

めでたい。めで鯛。
幅一尺。横三尺。もめんの布。東京は浅草ふじ屋。
江戸情緒をしのぶ染絵「てぬぐい」。海面に飛び跳ね、溢れんばかりに染め抜かれた真っ赤な「鯛」。
岐阜県は大垣市。檜が「ぷ〜ん」と香り、
飛騨萩原の銘酒、天領が並々と注がれた一合「枡」。
その枡には参列者一人ひとりのの名前が刻印されている。
主催者の心配りです。
大座敷に「膳」。温泉で一風呂浴びた湯上り。
浴衣に丹前。気の置けない仲間を囲んで、新郎、新婦を肴に、グイッと一杯。
ここは、天下の名泉、岐阜県は南飛騨「下呂温泉」の望仙館。
そうです。町内会の慰安旅行の雰囲気で、と、一味変わった我社の幹部の結婚披露宴。
司会の挨拶もそこそこに、いきなり、新郎。
「てぬぐいは、額にいれますと豪華で安上がり最高の装飾品で・・・・・。
枡は我社でPR中の日本一生産高の大垣・・・・広告のことなら中広へ。」と宣伝ばかり。
「あっ。結婚式を挙げました。幸せにします。」と和やかな報告とお礼。
乾杯の音頭は私。
「判断力が鈍ると、人は結婚するんです。
「忍耐力が失われると、人は00するんです。
判断力をなくした二人が、結ばれました。忍耐力を失わないように。
乾杯。と。後は、たる酒の鏡割りで無礼講。破天荒な大宴会。
翌朝。二日酔い。痛い頭を振り振り、旅館の布団で目を覚ます、
「酔っ払ったよ」。と。鯛のてぬぐいぶら下げて、朝風呂へ。
「夕べは、二次会に行ったかい」と風呂で同輩に。
「12時過ぎ。三次会までやりましたよ」。「へ〜。花嫁さんは早く休んだかい」
「いやいや。最後まで。そうとう枡酒飲まれましたが、
飲むほどに冴え、新郎殿に、この程度で、つぶれて、どうするのよ」と。早くも、しりの下と評判。
そうか。そうか。「わがままな新郎には最高の花嫁」。「忍耐力が身に付きそうだな」
めでたい、めで鯛。名泉に鯛が飛び跳ねました。
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