同じ日本です。右でも左でも島国の内………大切なのは「志」では。
山形県の中央部に朝日町(あさひまち)がある。
人口7020人、小学校2、中学校1、保育園1。主な産業は農業、リンゴとぶどうの産地。
山形市から遠く朝日連峰を望む、その山懐に位置する豪雪地である。
もちろん、日本中が抱える典型的な山深い過疎の町。
人口減少は止まらず行く末が案じられるに例外ではない。
その朝日町に唯一の製造業がある。その名を朝日相扶製作所という。
従業員は140名。全員が代々地元に暮らす人たちである。
創業50年余で、木工家具を製造している。
それも世界に冠たるブランドメーカーからの受注による生産である。
全てが家具職人の徹底した手作りであり、OEM専門で自社ブランドは持たない。
どんな製品が製造されたかは、ここには述べられないが、調べればわかる。
まさにビックリポンである。ただ言えることは、その交通の便が異常なほど悪いし、
営業活動は一切やらないのだが、今では世界中から「製造依頼」の関係者が
朝日町に訪れていることである。受注残に忙殺とのことである。
この製作所。名前に相扶の文字が入っている。
「相互扶助」を創業の精神としているからである。
冬ともなると近在の人々は、現金収入を求め、都会に出稼ぎに行く。
「家族がバラバラ」に暮らす不幸を何とか解消できないか。
そんな「志」を持った創業者が「こけし職人」の技術をヒントに、
木工家具の製造を始めた、その「相互扶助」の思いを込め朝日相扶製作所と名付けた。
何もない雪深い山里で「高い志」を持った人たちが、自らの手で、製造業を起こし、
成功させた気宇な例かも知れない。
しかし、日本中の地方が、人口減少に歯止めをかけねばと。
移住定住に知恵を絞り「オラが町に来ておくれ」と鐘や太鼓で誘っている。
いや、田舎だけではない。47都道府県では4番目に人口の多い愛知県でも名古屋市と組んで、
「住むなら愛知」と東京23区から移住、就職する人には100万円を支給すると
誘致に拍車を掛けている。
誘致のデータはこんなです。東京23区と愛知名古屋を比較すると、
一戸建て住宅は5割安い。賃貸住宅は4割安い。住宅の敷地面積は2倍の広さ、
通勤時間片道で16分早い。消費者物価地域格差指数でも若干安い。
年間の収入は東京を1とすると、0.8と下がるが、物価が安いので、
差し引きで家計は黒字幅がでる。そうだ。
なるほどと思うのだが、なぜ、天下の愛知、名古屋がそこまで訴えて
東京23区から定住者を引っ張ってこようとするのか。
理由は至って簡単。2027年、東京、名古屋間のリニアが開通すると、所要時間は40分。
ストロー現象が起こり愛知、名古屋の人口も東京に吸い上げられてしまうから。
それも理解できるが、ちょっと待ったと申し上げたい。
愛知県周辺の各県の過疎地は、「オラが町は村はこんなにええぞ」と移住、定住を
声を大にして呼び掛けている。このまま人口減少に歯止めが掛からねば、
東京23区だって、日本中に呼び掛けるかも知れない。
同じ日本です。そんな定住合戦をしていてどうするのか。
山形の朝日町、朝日相扶製作所を見倣えとは言わないが、
天下の名古屋なら、自らの力で、魅力溢れる新たな産業を創り出す発想に
ならないのか。そんな思いに駆られるのは、「PRIDE OF NAGOYA」と叫ぶ、
私だけだろうか。Goto
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