風流踊・・・

文化は生活様式です。生きるに必要な様式は残ります。不要なものは朽ち果てます。
岐阜に生まれ、岐阜に育てられ、岐阜をこよなく愛する私です。
ユネスコが・・・岐阜の歴史や風土を反映して伝承されてきた民俗芸能「風流踊」を
無形文化遺産に登録することになりました。それも岐阜県の郡上市で二つもであります。
一つは日本三大盆踊りと言われる「郡上おどり」です。
これは有名ですから、多くの人がご存知です。400年以上にわたり・・お盆を中心に1か月以上、
街の中心部で繰り広げられます・・徹夜で踊り明かす「徹夜踊り」は有名で、
最近は全国から50万人以上の人々が踊りの輪に訪れます。岐阜県の夏の風物詩です。
風流踊りでの遺産登録は当然ですね。ありがたいことです。
もう一つは郡上市の山あいにある80軒弱の小さな集落・寒水地区で受け継がれてきた
「寒水の掛踊り」です。掛け踊りは地区の白山神社の例祭です。伝説によりますと、宝永6年
(1709年)母袋(もたい)村から寒水に伝わったとされ、踊りと共に預かった十一面間観音や
神社建立の棟札はいまも神社に残っています。
明治の末期までは母袋村から声自慢の人たちが峠を越えて踊りに来て、
神社前で寒水の人たちと歌の掛け合いが行われ、いっしょに
輪になって踊られて痛そうです。掛け合いの名称は、この掛け合いの意味です。
300年に渡って、五穀豊穣に感謝し、近在の集落から人々が神社に集い・・・
花で飾り付けた竹の「しない」を背負った若者四人が、太鼓や鉦を打ち鳴らしながら、
舞を披露します。地元の神事で、厳かな祭りです。それを「風流踊」というのですが・・
日本全国に分布する41件の風流踊りがユネスコに登録されるのは嬉しいことです。
風流踊りの風流とは何か・・・日本人が継承した美意識です。
人目を驚かすために太鼓や鉦を打ち鳴らし華美な趣向を凝らした意匠を指します。
自然を相手に農耕で地道に暮らし集落を形成してきた人々が、年に一度だけ神仏の前で、
華美に狂する・・・これを風流というのだと私は思っています。
現代の日本語で日常に用いられる「風流」の言葉は酔狂な個人を指しますが・・・
その源流は、風流踊りを継承してきた日本の小さな集落にあるのではないでしょうか。
太鼓・鼓・笛・鉦などの囃子に合せて歌いながら踊る群舞。
そこには自然への畏敬と同時に抑制されてきた人々の跳ね返りがあります。
そこはかとない哀愁が漂います。美意識です。
登録された風流踊りも、人口減少・取り分け若者がいないと継承が危ぶまれています。
それぞれの保存会では登録を契機に次世代への継承に弾みになればとの思いが滲みます。
私は思うのです。文化とは生活様式です。必要なものは残ります。悪い様式は消えます。
時が如何に移り変わろうとも・・風流踊が日本人の心の支えである限りは・・
継承者がたとえ一人になろうとも伝承されるでしょう。
ユネスコは無形文化遺産に登録しようがしまいが・・・風流踊りには日本人の
そんな気概を感じます。若者がいないならば・・高齢者が必死に継承すれば良い。Goto

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