泥の河

ダメなモノはダメ。反戦の思想を・・・捨ててはいけない。
このブログにしばしば、熱いメッセージを寄せて頂く「レモンハート」さんが、連休は読みたい本を「かじり読み」して過ごす予定、と述べたところ、村上春樹さんも良いが、宮本輝さんの短編「泥の河」に魂が震えますコメントがありました。
宮本さんの小説には、馴染みがなかったので。では・・と、お勧めの短編「泥の河」を読んでみました。ありがとうございました。氏は47年生まれの団塊世代。私と同世代です。(村上春樹さんも、北方謙三さんも・・・)
28歳の作品と知り・・・同じ時代の空気を吸っていた一人として、戦後の昭和を丁寧なタッチで描かれているのに、胸がキュンとなりました。
折角の推薦ですから・・・感想を。まず死についてです。「雨あられの砲弾の中でもかすり傷ひとつせんかった男が復員して三ヶ月ほどで、五尺ほどの高さから落ちて{すか}みたいな死に方で死によった」
と、戦場で死線を彷徨った父親がコップ酒を煽りながら少年に・・命の大切さと戦争の悲惨さを語る。私も、親父殿のひざに抱かれて、下士官だった頃の話を聴いたのとがダブります。死と真剣に向き合えば反戦の思想になったのだと。
欲しモノが手に入らない時代。少年と友が、父親にもらった小銭を握り祭り見物に。穴の空いたポケットから小銭が消えて・・・・欲しくて仕方がなかったロケット花火が買えなくなる。友は露天商の目を盗み万引きを・・・。
少年は泣きじゃくって「泥棒・泥棒・泥棒」と。「ごめんな、ごめんな、もう盗んだりせへん。僕、もうこれから物盗ったりせえへん。そんこと言わっとてな。もうそんなこと、言わんとってな」と友が泣く・・・・。
貧しかったが・・・・でも、やってはいけないこと。人の道に外れたことには子供同士でも厳しかった時代だった。それに引き換え近頃は・・・とは言うまい。そんな時代を、古き良き時代にしてはいけない・・・大人の責任だと・・・思いつつ「泥の河」読ませてもらいました。
28歳だった宮本氏・・・あれから35年。最近緒の作品に、何が書かれているのか・・・、同じ時代の空気を吸って生きてきた作家が「泥の河」以降を、どう捉えているのかを、知ってみたい。団塊世代の軌跡として。
レモンハートさん。ありがとうございます。今年は勝負の年とか・・・。自尊心も必要です。
ぜひ・・・・・・頑張って下さい。                                   Goto

コメント

  1. レモンハート より:

    宮本輝さんの家族についてですが、親父殿は戦前、中国(上海)との貿易で活躍するが、戦後ことごとく事業に失敗。最後は精神病院で亡くなられたそうです。かなりの親中派だったそうです。母親は心労でお酒に手を出しアルコール依存症。御婆さんも謎の失踪。宮本輝さん自身も結核で長い病院生活を送られたそうです。私たち世代と全く違う世界。宮本輝さん、村上春樹さん、そして、後藤社長殿にとって少年時代は心に幾つもの深い傷を刻んだ世代でもあります。作品に力があるのはあたりまえ。最近の作家さんは面白いのですが心に残らないのはそのせいですか・・・?

  2. Goto より:

    情報ありがとうございます。
    連休を「かじり読み」で楽しんでいます。
    宮本氏、広告代理店の古き良き時代を過ごされたんでしょうね。勿論、今も面白い仕事ですが。但し、代理業ではなくなりましたが・・・。
                 Goto

  3. レモンハート より:

    ありがとうございます。「泥の河」を共感しあえたこと(しかも、こんなに早く)をうれしく思います。
    宮本作品の中でも特にオススメは他に人間再生を書簡体で描いた「錦繍」、運命・人間の原罪を競争馬を通して描いた「優駿」、そして一押し戦後の時代相を背景に父と子を描いた「流転の海(現在6部まで発行)」です。ちなみに宮本輝さんは元広告代理店で勤め自らの企画でTVCMにも何度か出演されていたみたいです。