最低賃金の決定方法に工夫が必要ではないか。
最低賃金の引き上げ額が50円・過去最高額になりました。
識者は物価高を背景に実質賃金の低下を抑えて消費力を確保するために、
中小零細企業の賃上げ率が2.3%にとどまる中で、5.5%に踏み込んだ。背景には賃上げによる岸田首相の政権浮揚策があるという。
最低賃金が引き上げられることって、どんな意味があるのか?
キリの良い額で、50円にしたとするならばそんな安易なことで良いのか?
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度だ。本来重視されるべきは労働者の生計費と賃金水準なはず。本来の労使で交渉する通常の賃金交渉とは違う。賃金の権限は政府にある。
政府はなぜ、この額にするのか、明確に示すべき。
どう間違っても恣意的であっては絶対にならない。
私は最低賃金を過去最高とする大幅な上昇を否定するものではない。
政府には中小零細企業で「人手不足倒産」が増えている実態もきちんと見ているのかを問いたい。人手不足倒産とは最低賃金の上昇といった人件費の高騰により給与が払えないなどの影響で、従業員を雇えず企業が潰れることを指す。
韓国の例だが「17年に発足した文在寅政権は最低賃金1万オン」を政策に掲げ、22年までに計41.6%の大幅な値上げを断行。中小零細企業は急激な人件費負担に耐えきれなくなって倒産が急増した。日本で同様な事態が起こるとは思えないが、引き上げのペースをどう考えるかは重要だ。
最低賃金の目安を議論するのは、中央最低賃金審議会だ。データ重視で賃上げ幅の根拠としているが、具体的な指標は、企業規模別の賃上げ率だったり、消費者物価指数のうち光熱費や生活必需品だったり、年によってまちまちで、しっかりとした根拠に基づいて決定されていないのが実情だ。だから政治の力が働くことになる。
私は思う。英国は賃金分布の中央値の3分の2まで最低賃金を引き上げる方針を示してきた。22年の欧州連合指令も「賃金分布の中央値の違い60%」を国際指標と表現している。いずれも相対的な最低ラインを設定する考え方が定着しているという。
今のような決定の仕方では、中小零細の経営者側の同意を得て改訂を進めるのは妥当ではない。欧米に倣えとはいわないが、労働者の生活保障と企業の健全経営を両立させるために、新たな決定方法に知恵を絞るべきではないか。Goto
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