宮城県石巻地区の春をお届けします。
東北の春は遅い。
だが、その遅さがいい。厳しい冬を耐え抜いたからこそ
北国の春には、人の心をじんわりと溶かす温もりがある。
五月に入り、我が愛読紙、石巻日日新聞から、今年も春の便りが次々と届く。
頁をめくるたび、石巻の潮の香りが漂ってくるようで、胸が熱くなる。
石巻と言えば、東北屈指の漁港であり、日本有数の水産加工の町である。先日、近所のスーパー、イオン正木店へ立ち寄ったところ、店頭に「石巻ブランド・金華サバ」のしめ鯖が並んでいた。これは食さねば失礼というもの。早速、酒の肴に頂いたが、これが実に絶品だった。脂の乗り、締め加減、旨味の深さ。やはり本場の魚は違う。三陸の海の力を舌で感じた。
さらに石巻魚市場には、今季初の養殖ギンザケが入荷。「金華ぎん」の名で人気上昇中だという。例年より遅れたものの、脂の乗りは抜群。初値はキロ1250円の高値を付けたそうだ。石巻魚市場では、今季5300トンの取り扱いを予定しているというから、その規模にも驚かされる。
そして隣町、女川町。ここは養殖ギンザケ生産量、日本一を35年守り続ける町である。その女川で、ギンザケ料理専門店「女川銀鮭広報部」がオープンしたという記事を読み、思わず顔がほころんだ。町ぐるみで「銀鮭文化」を育てようという気概が伝わってくる。
先月、私は花巻までは足を運んだ。できれば、そのまま女川まで走り、銀鮭を味わいたかった。残念ながら叶わなかったが、昼食にはちゃっかり海鮮丼を頂いた。これがまた実に美味かった。東北の海の幸は、人を幸せにする力がある。
そうそう、石巻と言えば、忘れてならぬのが鯨文化である。今季初、青森沖で捕獲されたミンククジラが石巻へ運び込まれたとの記事も載っていた。体長4.8メートル、重さ1.2トン。北海道・東北VCサミットで石巻を訪れた折、「宴席で鯨料理が食べられるかな」などと甘い期待を抱いていたが、現実はそう簡単ではない。
水産庁の定めるミンククジラの捕獲枠は145頭。やはり庶民には遠い高級食材である。しかし、それでもなお、石巻に息づく捕鯨文化には独特のロマンがある。
また、私は石巻日日新聞の社告にも深く共感した
より良き取材活動と新聞配達業務維持のため、
購読料改定への理解を求める内容だった。
地方紙はいま、厳しい時代に置かれている。ネット社会の中、情報だけなら無料で溢れている。しかし、地域を歩き、人に会い、汗をかき、暮らしの温度を伝える新聞は、決してAIにもSNSにも代替できぬ。地域を支えるのは、結局、地域を愛する人の眼差しである。石巻日日新聞には、その眼差しがある。
そして、もう一つ。これはぜひ記しておきたい。女川町浦宿浜の鈴木さんが、町制施行100周年を祝い、「ピアノの音が響く町に」と、グランドピアノ購入費として1500万円を寄付されたという記事である。
なんと美しい話だろう。人は財産を残すより、文化を残す方が難しい。しかも、自分の名誉のためではなく、町の未来のために寄付をする。その心根に、私は深い感動を覚えた。漁業の町に、ピアノの音が響く。潮風の中に音楽が流れる。その情景を想像しただけで、胸が温かくなる。
石巻、女川。この地は、震災という未曾有の悲しみを背負った。しかし、人々はそこから立ち上がり、海を守り、文化を育て、人を思い、未来へ歩いている。だから私は、石巻が好きだ。魚が美味いからだけではない。人が温かいからだ。懸命に生きる人々の姿があるからだ。
春の便りを届けてくれる石巻日日新聞に感謝しつつ、
石巻地区のさらなる発展と幸多からんことを、心より祈りたい。Goto



コメント