花を愛で風を楽しむ

小さなヤギ牧場に癒される。

5月は、やはり5月です。
一年でもっとも生命力が溢れる季節ではないでしょうか。

野辺に出れば、バラ、ツツジ、カキツバタ、シャクヤク、アヤメ、フジ、ポピー、ネモフィラ、マーガレット。色とりどりの花々が咲き誇る。若葉は風に揺れ、空は高く、五月晴れの青空がどこまでも広がる。湿気も少なく、吹き抜ける風は爽やか。冬を耐え、春を越え、自然界が「生きる喜び」を一斉に謳歌しているように見える。

田畑には苗が植えられ、人もまた動き始める。ゴールデンウィークに家族連れが行楽地へ向かい、子どもたちの歓声が響いた。5月とは、本来、人間の心まで明るくしてくれる季節なのだろう。

しかし、今年の世相はどうだろう。
新聞を開けば、ガザでは戦火が止まず、ウクライナでも砲撃が続く。イラン情勢は緊迫し、世界は一歩間違えば大混乱へ向かいかねぬ空気に包まれている。

国内でも痛ましい事件が続く。京都では児童虐待による絞殺事件。未来ある幼い命が奪われた。部活動の遠征では、居眠り運転による交通事故で高校生が命を落とした。

更には異常とも思える物価高。不況感が漂う一方で、株価だけは高騰する。庶民感覚とかけ離れた数字が踊り、「この国はどこへ向かうのか」と、不安を抱く人も少なくあるまい。どこか歯車が狂っている。そんな気がしてならない。

だからこそでしょうか。人は「癒し」を求める。富山県氷見市の山あいに、小さなヤギ牧場があるという。ヤギのミルクを飲んで育った一人の老人が、八年前、生まれ育った地区で始めた牧場だ。最初は二匹だったヤギが、今では三十九匹。今年生まれた子ヤギたちが、ぴょんぴょん飛び跳ねる姿を見て、来場者が「癒される」とSNSに投稿。それを見て県外から観光客やボランティアが訪れる人気スポットになった。何とも微笑ましい話ではないか。

老人は「五十匹まで増やしたい」と張り切っているそうだが、その気持ちもわかる。
人は案外、そんな素朴で、小さく、温かな風景に救われるのである。

もう一つ、面白い研究がある。
私は昔から音楽が苦手だ。歌も駄目、楽器も駄目、リズム感も怪しい。ところが最近、チンパンジーが木を叩くリズムに、音楽の構造があることが分かってきた。ドラミングには「メロディーやハーモニー」に通じる法則性があり、仲間たちは寄り添って聴くらしい。つまり、音楽を楽しみ、癒されているのである。猿ですら音楽に心を和ませるのに、それに引き換え私は、まことに情けない。トホホである。

だが、こんな最高の季節に、殺伐としたニュースばかり見続けていると、子ヤギに癒される人の気持ちも、音楽に心を洗われる人の気持ちも、よくわかる気がする。

人間とは、何とも愚かな生き物だ。
しかし同時に、小さな優しさや温もりに救われる存在でもある。
五月の風は、そんなことを静かに教えてくれているように思う。Goto

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