子どもたちに鵜飼見物の徹底を。
岐阜市の夏の風物詩、長良川鵜飼が5月11日に開幕した。10月15日まで、中秋の名月の日と増水時を除き、毎夜、清流長良川で幽玄の世界が繰り広げられる。岐阜を代表する伝統文化であり、極めて重要な観光資源でもある。
だが、岐阜の鵜飼は長良川だけではない。
関市・小瀬の鵜飼もまた、1300年以上の歴史を有する由緒ある鵜飼である。
私はぜひ、多くの方に小瀬鵜飼も味わって頂きたいと思う。長良川鵜飼の華やかさとはまた違う。どこか静かで、落ち着きがあり、漆黒の闇と静寂の中へ、ゆっくりと引き込まれていく。鵜飼通に人気があるのも頷ける。
特に印象深いのは音である。
篝火が「バチバチ」と燃える音。鵜匠が「ホウ、ホウ」と鵜に声を掛ける声。そして、船腹を「コン、コン」と叩く音。闇夜の長良川に、その響きだけが浮かび上がる。実に幽玄であり、日本人の感性に深く沁み入る世界だ。
長良川の鵜飼も素晴らしい。しかし、小瀬鵜飼もまた格別である。
まだご覧になっていない方には、ぜひ一度、足を運んで頂きたい。
もっとも、鵜飼を取り巻く環境は決して平坦ではない。
1970年代には30万人を超えた長良川鵜飼の乗船客数も、2018年には西日本豪雨や台風の影響などで7万人台に減少。さらにコロナ禍では、開幕延期や定員制限の影響を受け、1万人台まで落ち込んだ。22年もなお5万人台に留まり、「鵜飼は本当に観光資源として成り立つのか」との声すら上がった。
しかし、若い市長に代わってから、流れが変わった。
金華山の岐阜城天守閣を覆っていた樹木を伐採し、岐阜市民のシンボルたる岐阜城が美しく浮かび上がった。さらに観覧船を高級化し、鵜匠による説明会を毎日開催。ゆったりと、じっくりと鵜飼を楽しめる環境づくりを進めた。今年は、豪華寝台列車「ななつ星in九州」を手掛けた工業デザイナー、水戸岡鋭治氏による新たな高級観覧船も導入され、8万7000人の乗船客を見込むという。
物価高、人件費高騰の時代である。乗船料も2割値上げされた。それでも予約数は前年同期比8%増。復活の兆しは明らかだ。若い市長の感性と経営手腕、大したものである。
だが、私には一つ願いがある。
岐阜市の小中学生たちに、ぜひ鵜飼を見せてやって欲しいのだ。
観覧船が難しければ、河原の一等地でも良い。
昨今は、「夜の川遊びなど危険だ」「安全第一だ」と、何でも冒険を遠ざける風潮が強い。しかし、1300年続いた伝統を守り抜くには、市民自身が鵜飼を知らねばならない。幼い頃に見た篝火の美しさ、川風の涼しさ、鵜匠の声。そうした感動が、郷土への誇りとなり、「残したい」という心を育てるのだと思う。
高級路線も一つの戦略である。だが、それだけでは伝統は末代まで残らない。未来を担う子どもたちの心に、長良川と鵜飼の感動を植え付けること。それこそが、本当の意味での伝承ではないだろうか。
清流長良川。
1300年の灯を、未来へ。Goto


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