景気の追い風を、未来の力に

景気の波に左右されない、人を育て、考えることをやめない企業に。

日本銀行が10月1日に発表した9月の全国企業短期経済観測調査、いわゆる「短観」。大企業・製造業の業況判断DIはプラス24となり、6期連続で改善しました。2018年3月以来、8年半ぶりの高い水準です。AIや半導体関連の世界的な需要が、製造業の景況感を押し上げています。

AIの進展には半導体が欠かせません。そして半導体をつくるには、製造装置や素材、部品、プラスチック製品など、さまざまな企業の力が要ります。大きな需要の波は、関連する中小企業にも仕事をもたらしているのでしょう。かつて日本経済を自動車産業が引っ張ったように、今は半導体が景気の追い風をつくっている。そう考えれば、今回の短観が示す明るさも理解できます。

けれども、景況感を一つの数字だけで語るのは難しいものです。大企業・非製造業のDIはプラス35で、前回から悪化しました。仕入れ価格や人件費の上昇が利益を圧迫し、価格を上げればお客様の買い控えを招きかねない。とりわけ中小企業にとって、コストを商品やサービスの価格に転嫁することは簡単ではありません。半導体関連のような追い風が届きにくい業種や地域もあります。今回の短観は、景気の明るさと厳しさが同居していることを示しているように思います。

企業が見込む物価上昇率も、1年後と3年後がともに2.6%、5年後が2.5%です。企業側にも、物価上昇が続くという見方が根づいています。価格転嫁が進めば、企業の収益改善につながる一方、家計の負担は重くなります。個人消費は日本経済を支える大切な柱です。家計が節約を強めれば、企業の売上にも影響が及びます。景気の行方は、製造業の好調だけでは見通せません。

中小企業の経営者にとって、「景況感が改善した」と聞いても、すぐに実感できるとは限らないでしょう。それでも、追い風が吹いている分野があるなら、自分たちの仕事にどう結びつけるかを考えたい。取引先や地域の変化を見つめ、技術やサービスを磨き、新しい需要に応える道を探す。景気が良いときにも、厳しいときにも、考えることをやめない姿勢が会社を支えます。

私がとりわけ大切だと思うのは、人を育てることです。景気の波は、企業の力だけでは決められません。しかし、人を育て、力を合わせ、変化に応じられる会社をつくることはできます。仕事の意味を伝え、学ぶ機会をつくり、社員一人ひとりが持つ力を生かす。人材を育てることは、目先の景気に左右されない経営の土台です。

これから年末年始に向けて、消費が動く商機が訪れます。短観が示した追い風を、ただの数字や過去の実績として眺めていては、商機はつかめません。何が売れ、何を求めるお客様が増えているのかを確かめ、今できる準備を一つずつ進める。景況感が良いなら、その風を生かす。厳しいなら、さらに知恵を絞る。中小企業には、中小企業ならではの機動力と工夫があります。

景気の数字を未来の実績に変えるのは、私たち自身の行動です。人を育て、地域の動きを見つめ、年末年始の商機を逃さない。追い風を受け止め、次の一歩につなげていきたいと思います。Goto

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