百年先へつなぐ、青森の手仕事

この冬に備え、100年コートを買おうかな。

青森の友人から気温が一桁になったと。十月も中旬。朝夕の風に、そろそろコートが恋しくなってきました。私は今も、亡父が海外で買ってきたバーバリーのコートを着ています。もう五十年以上になるでしょうか。少しほつれたところもありますが、流行に左右されない形は今見てもなかなかおしゃれです。袖を通すたび、親父殿の面影とともに、物を大切にする心まで受け継いでいるように感じます。

私が子どもの頃の岐阜は、既製服づくりが盛んな町でした。母をはじめ近所の主婦たちがミシンを踏み、地域のアパレル産業を支えていた姿を、今も鮮明に覚えています。時代とともに岐阜の縫製業はかつての勢いを失いましたが、ものづくりの記憶は私の中に残っています。

そんな折、青森県七戸町で「100年コート」を縫い上げるサンヨーソーイング青森ファクトリーの話を知りました。三陽商会のコートづくりは、戦後の1946年、防空暗幕の生地で紳士用レインコートを作ったところから始まったそうです。青森の工場も半世紀を超えてコートづくりを続け、職人の手で一着一着を仕上げています。襟や袖など細かな工程を重ね、長く着られる形を生み出す。その技術は、国内外から高く評価されているといいます。

2025年、国内で供給された衣料品のうち国産品は、数量ベースでわずか1.1%でした。衣料品の多くが海外で作られる今、青森で技を守り、地域の人々と力を合わせて上質なコートを作る営みは、まことに貴重です。工場だけで全工程を抱えず、近隣の人たちも手仕事を担う。地域の力がつながって、一着のコートができあがるのです。

職人の道は一朝一夕ではありません。ミシンを自在に扱えるまでにも、難しい工程を任されるまでにも、長い年月がかかります。本物を生むのは、近道を求めず、目の前の仕事を丁寧に重ねる姿勢です。そして技術は、教える人と学ぶ人がいて初めて次の世代へ渡ります。働きやすい環境を整え、人を育てることも、ものづくりを守る大切な仕事でしょう。

「100年コート」は、手入れや修理を重ねて次の世代へ渡すことを目指すコートです。親父のコートを着続ける私には、その思いがよくわかります。この冬は、青森の職人が仕立てた一着を新たに迎えてみようか。いつか私のトレンチコート姿を、あなたにも見てもらいたいものです。

AIの時代になっても、人の手が覚えた技と、使う人を思う心は、ものづくりの芯として残ってほしい。青森の美しい手仕事に敬意を表し、日本の技術が人から人へ、地域から次の世代へ受け継がれていくことを心から願います。Goto

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