別状ない

富士の山より婦人の力
昨日は江戸。寒の入り、抜けるような青空。200kmを越すスピードで東進する「のぞみ」。読んでいた「お家さん」(玉岡かおる著・新潮社)からふと、顔を上げ、車窓に目を移すと。
そこには、一点の曇もない、冠雪を頂いた「富士の山」。絵葉書。銭湯の壁絵。広重の版画。風景画、写真。古今東西、いかなる、「富士山」も、目前の、美しさには、及ばない。
思わず。合掌する。
本に目を落とす。大正から昭和のはじめ、神戸を本拠に、近代国家の一翼を担った、幻の商社・鈴木商店。その巨船の頂点座した「お家さん」と呼ばれた、ひとりの「女性」。時代に翻弄される運命の物語。
商社の繁栄。衰退。女の幸せ、不幸。それに、国際社会への挑戦、失敗。そして、事業の起業、倒産。激動の時代を生き抜いた彼女の口癖。それは「別状(べっちょ)ない」。
その意味は、心配ない。どーてことない。大したことはない。なんだろ、が、私にはもうひとつの大きな意味があると、その「お家さん」から学んだ。
それは、「富士の山」より、大きく、美しく、そして、ドンと構えている「日本女性」の強さ、気高さだ。
人口の半分は、この強く、気高い女性達だ。日本の経済。この不況に迷路を彷徨うがごとく、右往左往しているが、所詮人間のやること。「別状ない」。「別状ない」。「べっちょない」。
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