利他愛の想い

あなたに伝えたい。ごちそうさま、ありがとうの30編
数字が上がった下がった。データが良いの悪いの。切った張ったの営業の世界。
不況の嵐に煽られているせいか、頭の片隅に数字がちら付き、暑さと相俟って気もやすまらない。
でも、ありがたいのは、「ぶつぶつ」と、独り言が多くはなりましたが84歳の母が、元気なことです。
同居ですが、二世帯住宅。食事は別々ですが、月に何度かは、夕食を共にします。
そんな折、この季節なら、「なすの煮付け」や「湯がきたてのとうもろこし」、それに、私の好物、
母特製の「スライスオニオンにアジの片栗粉焼き」などの手料理を持参。食卓を賑わせます。
先日、「私のマザーフード」と題した、
妙に泣ける、涙が止まらないな感動的な本を読ませてもらいました。
「感謝の気持ち」が薄れてる時代、「食」を通して社会問題を解決したいと志す企業が、
「思い出に残る食の体験」というテーマでエッセイを公募、2000通に及ぶ応募作品から
厳選された三十編と、作品にまつわる料理や食材の写真を組み合わせた綺麗な本です。
最優秀賞グランプリ「ちゃぶ台の一皿」から入選ハートフル賞「母の珍おやき」まで。力作ばかり。
目次の頭に「あなたに伝えたい。ごちそうさま、ありがとうの30編」と書かれている言葉の通り。
生きるために食べる、食べさせる。そこには語りようのない親子の情が、家族の愛が、健気に生きる日本人の心根が息づきます。「ファザーフードの思い出」なんて一編には涙が溢れます。
短い一編、一編ですが、日本人の食文化が、その風土に育まれた食材とともに、切なく心に沁みます。、郷愁が綴られています。
あとがきには、だれもが持っている「食」の感動のシーンは、自分の事は二の次に、家族の喜ぶ顔が見たいから、といった「利他愛の想い」が「マザーフード」の原点ではないかと。
マザーフードとは、「お袋の味」「家庭の味」のこと。
食を通じて社会問題の解決をとの、この企業の理念が頷けます。
不況も何処吹く風。元気な84歳の母が、還暦を迎える息子のため、
手料理作りに汗を流す幸せに感謝する。盛夏です。
                                          Goto
追伸
私は、この本、日本文学最高峰のエッセイ集だと思います。
感動と涙だけでなく、文章表現、構成、写真も見事です。勉強になりました。
本の題名「私のマザーフード」
編者「シダックス特別企画」
出版社「冬花社」定価1260円

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