経営業務部門に協会賞がないのが、新聞の限界ではと思うのだが。
新聞社の最高の名誉ってなんだろか。
日本新聞協会賞を受賞することだと思う。
そもそも新聞の使命とは、権力を監視し、社会的弱者に目を向け啓発し、
社会正義を貫くことにある。大方の日刊紙の綱領である。
5日、2018年度の新聞協会賞が発表された。
賞は三部門あり、優れた報道に贈られる「編集部門」には三社が選ばれた。
朝日新聞の「財務省公文書改ざんを巡る一連のスクープ」(東京・大阪社会部)
ご存知の通り、財務省は決済文書改ざんを認め、当時の理財局長始め幹部職員を処分した。
忖度などという言葉が話題を集め、律令国家の中枢である財務省でさえ、
安倍一強政権におもねる姿を浮き彫りにした。
情報を入手し、精査検討し、権力の魔の手に怯えながら、
報道まで漕ぎ着けた朝日新聞社会部に改めて敬意を表したい。
ジャーナリズムの本懐、新聞史に刻まれる一大スクープです。
同じく編集部門に選ばれた毎日新聞社東京本社の「キャンペーン報道
『旧優生保護法を問う』」は衝撃的でした。
(毎日新聞社の受賞は3年連続で、30件目で、同部門の最多記録を更新中です)
戦前ならいざ知らず戦後もです、1948年から1996年、22年前まで、
「不良な子孫の出世防止」を目的に障害者らに不妊手術を
旧優生保護法に基づいて強制していた。
15歳の時に手術を強いられた宮城県の
60代の女性が全国で初めて国を相手に損害賠償請求訴訟を
仙台地裁に起こす方針を朝刊で特報した。
その後、差別や偏見を恐れ被害を訴え出られなかった人々の境遇や苦悩、
不妊手術に関わった医師や行政関係者の証言を報じ、法制定の経緯や背景、
全国の都道府県や公文書館に残る旧法関連の記録を掘り起こし、半世紀に渡って
闇に閉ざされきた実態に光をあてた。
毎日新聞の東京本社地方部を中心に全国の記者が一丸となった報道です。
報道は国民の共感を呼び、党派越えて国会を動かし救済や各地での
国に対する一斉提訴となった。よくぞここまで丁寧に取材し、社会を動かしてくれた。
弱者の立場に立つ、これぞ新聞の真髄です。
こんな酷い差別、人権蹂躙が戦後も続いていた、その責任は、
もちろん国にあるのだが、私は法曹界も問われて然るべきだと思う。
手元に資料がないので、評論できないが、編集部門でもう一つ、
河北新報社の東日本大震災を扱った「止まった刻、検証・大川小学校事故」も
選ばれた。
他の部門では技術部門、朝日新聞のデジタルに配信した記事が
読者にどのように読まれたかを可視化するために開発した分析ツールが選ばれた。
だが、経営業務部門は該当なしとなった。ジャーナリズムの精神を問う賞とは違うが、
経営が悪化しては、良い報道も記事も書けない。
経営部門の賞がないのは大問題だ。新聞経営者の怠慢を指摘しておきたい。
それと、新聞協会賞についての記事が当該紙以外は掲載されないのは如何なモノか。
競争相手の素晴らしい報道は、商売仇だから報じないのか。
その尻の穴の小ささが、新聞の限界を露呈しているのではないか。
例え競争相手であっても、相手を讃えるだけの度量が欲しいものである。
でなければ、自分たちの団体組織である日本新聞協会を
自分たちで貶めていることになりはしないか?Goto
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