官僚たちの夏

律令国家の担い手は出戻り官僚だと思うのだが。
1970年に開催された大阪万博、誰が言い出しっぺだったかご存知ですか。
「入省3年目、たったひとりの官僚の熱意が導いた」のです。
安倍首相、4月、公務員の入省式で、彼の名前を挙げ「奮起」を促しました。
私の人生で、いくつか大きな失敗をしましたが。いや、いつも失敗の連続ですが。
東京四谷にある彼の自宅兼貸事務所に我が社の東京支社を借りなかったことは、
一生の不覚だったと今も悔やんでいます。私の決断力のなさです。
この国は平安の時代に作り上げられた役人、官吏が国を動かす「律令国家」です。
時代によって変遷はしていますが、今もこの国は中央官僚の手によって動いています。
取分け、戦後、軍部に握られていた権力を取り戻した官僚たちは……
国造りに思う存分力を発揮しました。
その象徴は戦後の復興・高度成長を主導した旧通産省の官僚たちです。
城山三郎の小説「官僚たちの夏」にそのありようが見事に描かれています。
この国は優秀な「官吏」たちによって、今も昔も牽引され、存在してきました。
しかし、その官僚たち、つまりは律令国家の主役である官吏に
異変が生じてきました。優秀な学生が官僚になりたがらないのです。
東大「文1=法学部、キャリア官僚」このエリート方程式が総崩れ、
18年度の東大出身の国家公務員は15年度から3割も減少。公務員離れが顕著に。
今や就職を目指す大学生の7割が将来の転職を考える時代。
霞ヶ関ではいまだに入省年次が重要で、下積みから始めて次官を頂点とする
出世レースを同期で競っている。民間企業が雇用改革を進めるなか、
学生からみて如何にも旧態然と映るのが、官僚離れの原因ではと分析されいます。
でもです。私はそんな分析はいっときのモノだと思う。
優秀な学生が官吏以外の流行りの職業に就くのはいつの時代も同じ、
しかし、結局は、国家を動かせるのは、官僚だと気付くのです。
これも最近の傾向だとか。国家公務員を辞め転職した人が、
東日本の被災地で会った経産官僚の姿に、霞ヶ関に復帰を決めた人や。
大蔵省に入省したが、外資系のコンサルタント会社に転職したが……
日本の金融政策を何とかせねばと、金融庁に復帰した話など「出戻り官僚」が増えたと。
私はそれで良いと思う。いや、むしろその方が良いと思う。
人生100年時代です。50歳台で肩たたきして、官僚を卒業する時代ではない。
民間での経験を積んだ官僚が「律令国家」を支えるようになれば、
成熟するこの国を担うに相応しい官僚になるでしょう。
我が尊敬する大阪万博の言い出しっぺ「堺屋太一氏」も
草葉の陰から、彼らを応援しているのではないか。
それにしても、2025年、大阪万博に「大阪維新の理論的支柱」
堺屋太一さんがいないのは残念ですが。Goto

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