ぜんぶ変える・・・

『脱』じゃない『反』だ・・・「芥川賞にアンチテーゼ」その姿勢に敬意を表します。
伝統ある文芸誌、河出書房の季刊「文芸」が大幅リニューアルで売れに売れている。
出版業界、取り分け雑誌の落ち込みに歯止めが掛からない・・・
雑誌も書籍もなかなか売れない「こんな御時世」に業界では驚きの声が。。。。
編集長は就任から2年半の坂上陽子さん。彼女曰く「文芸担当の編集部員は3人に
減らされ、崖っぷち」「私も含めて文芸誌の経験はなし」素人集団が大化け。
それが増刷に次ぐ増刷や芥川賞作家の輩出が話題になり、定期購読者数が10倍、
実売部数は3倍だそうです。
経営者にしてみれば、お荷物雑誌、これでダメなら廃刊かと考えていたのか・・
それとも、才媛編集長に託したのか・・真意は定かではありませんが。
僅か2年半で部数が伸びて、どこがどうなったのかと業界でも話題沸騰です。
大幅なリニューアルって、何をどう変えたのか・・・
今の時代、文芸誌をゼロから立ち上げるとしたら、どうなると考えスタート。
「ぜんぶ変える」を合言葉に、毎号お祭り騒ぎで。新人作家を発掘、
取れたてほやほやの作品を次々と取り上げ特集を組んだことが・・・
特集のテーマは「ノリ」だけで。出版社もマーケティングの世界ですが、
編集部の3人だけが裁量権をもっているので、マーケティングへのアンチテーゼ。
そうですね。やはり上層部は「好きにやらせてダメなら・・・」そんな考えでしたね。
私も思うのです。出版業界のみならず。どんな分野でもある種の「型」があります。
「型」には「型」の良さはありますが、そこをぶち破らねば「変える」ことはできません。
坂上編集長は「業界全体が芥川賞を目指す風潮はよろしくない」・・と「型」に対する、
アンチテーゼが読者を引きつけたのではと。実に勉強になります。
更に、編集長「もし現状を変えたいなら『脱』なんて生温いことではダメ、
明確な『反』の意志が必要。いま文学のあり方に異を唱えるなら、自分たちが
本当に面白いと思う文学を押し出して、オルタナティブな場を作ることが使命。
せっかく面白い作家も次々に出てきている。逆にそういったオルタナティブな
運動こそが文学の王道だ」とも。
私は坂上編集長の「ぜんぶ変える」の実践に思わず唸ります。
そして、自由を許す河出書房新社の上層部に敬意を表します。
出版業界が低迷しているとすれば、経営者が「型」を尊重し、
成功体験のトラウマに溺れ、保身に走っているからではないでしょうか・・・
いや、出版業界だけではありません。どの分野・業界も同様です。
「文芸」の編集長に学ばせてもらいました。
私の定期購読コレクションに「文芸」が加わりました。Goto

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