デジタル先進国・スウェーデンでは紙の教科書に回帰した・・・
日本では19年に学校教育法が改正され「デジタル教科書」の使用が可能となった。教科書会社は紙と同じ内容のデジタル教科書を作っている。
小中学生に「1人一台」配備されたパソコンやタブレット型の学習用端末で見られるようになっている。
今年度から小中学校の英語で100%、算数・数学は55%の児童・生徒が使える状況にある。文科省は9月、中央教育審議会に設けた作業部会で、デジタル教科書の推進に向けた検討を始め、紙とデジタルの併用を国語など他教科書に広げる議論をしている。このままいけば早晩、教科書は全てデジタル化される流れである。
さてさて。なんでもかんでもデジタル化。時代の趨勢だから仕方がないのだが、
果たして教科書をデジタル化するをそんなに急ぐ理由があるのか?疑問である。
私はデジタル化を急ぐ風潮を自動車に例えて「そんなに慌てなさんな」と申している。
中国が国策でEV(電気自動車)を推進している。その影響もあって急速な伸びを示している。しかし、ここに来て、中国政府が予算を削減、補助を縮小したこともあって普及にブレーキが掛かっている。中国のやることだ。今後どうなるかはわからないが。その結果・一度、EVに振れた自動車が、ガソリンと電気を併用したHV(ハイブリッド車)に回帰している。
電気自動車をデジタル教科書に。ガソリン車を紙の教科書に例えると・・
一足飛びにデジタル化の弊害がよく理解できる。
そんなおり、こんな情報を目にした。
IT先進国・スウェーデンの小中学校の話である。
06年に学習用端末の「1人一台」配備がされ、教科書を含め教材がデジタルに移行した。そうです。スウェーデンはデジタル教材先進国になった。だが、このところ、教科書のデジタル化が要因ではないかと思われる事態が起こってきた。
経済協力開発機構(OECD)によるスウェーデンの小中学生の学力が、22年の国際学習到達度調査(PISA)では「読解力」と「数学的応用力」「科学的応用力」の全てで前回の調査から順位を著しく下げた。
デジタル教材が原因だとは思えないのだが・・デジタル化によって漢字が覚えられないとか、キーボードを叩けば、なんでも出てくるので思考力が落ちた・・・そんな話は大人の世界でも聞く。私のような高齢者はデジタルとは関係なく記憶力も含め学習能力は低下しているが。
でも22年10月・政権交代したスウェーデン。新政権は、こりゃ国家的危機だと、教育現場のデジタル化戦略を凍結。教材選択の裁量を持つ学校や教員に、紙の教科書が基本の授業へ戻るよう求めた。論拠は「学習の記憶は、どの辺りに書かれていたかといった物理的な位置情報と関係している。画面上の情報は記憶に残りにくい」ことが証明できるとしたからである。
その結果、スウェーデン教育相は「我々は今、科学的根拠を基に、正しい学習のあり方へ軌道修正している」として、紙の教科書が「1人一冊」となるよう再普及に予算を拠出した。考えさせられる。
日本の教育、デジタル教科書に舵を切るのも良いが、こんな先進国の例があるのだ。闇雲にデジタル化に走るのは考えものではないか。教科書だけではない。我々の日常にもデジタル化が深く入り込んでいる。デジタルは万能ではない。そのまま受け入れて良いのか。まだ過度期であることを忘れてはならない。Goto
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