――人間とは働くから人間である――
「仕事は苦役ではない」。私はそう信じている。人間は働くからこそ、他者と関わり、社会とつながり、自己を磨き続けられる存在である。働くとは、人生の修行であり、人間学の実践である。にもかかわらず、近年の日本には「働くこと=悪」という空気が蔓延している。ここが日本の衰退の根源だと、私は強く思う。
その点で、高市首相が掲げる「日本成長戦略」の最重要テーマに“労働時間の規制緩和”を置いたことを高く評価したい。残業できる時間を延ばし、企業の競争力を上げ、賃金を引き上げる選択肢を広げる。柔軟な働き方を認め、雇用の流動性を高める――まさに労働改革の本筋である。
19年に施行された働き方改革法案は、残業の上限を厳格に縛り、違反すれば使用者に罰金や懲役が科される。もちろん過労死対策は重要だ。しかし「働くな」と言わんばかりの規制強化では、生産性は上がらない。人的資源こそ最大の財産である日本で、労働を絞り込んでしまえば、成長など望むべくもない。
この愚策を緩めようとする高市首相の姿勢を、私は全面的に支持する。
一方、連合は「緩和は絶対にあってはならない」と反対する。しかし、その声は虚しく宙を舞う。現実に目を向ければ、この5年間で“人手不足倒産”は3割増。東京商工リサーチの発表によれば、倒産予備軍は24年度だけで1万3500社にのぼる。個人店舗や小規模企業は含まれていないから、実態はさらに深刻だ。
人手不足倒産は、求人難、人件費高騰、従業員の退職が引き金になる。従業員数の減少、売上の減少、利益率の低下――その先にあるものは“企業の消滅”である。日本全体が「働かない社会」に向かっていることを示す危険信号だ。
他国の例も他山の石となる。
英国では生産年齢人口の1割、実に400万人が「健康問題」を理由に働かない。医師の診断書があれば就労不能給付を受けられ、関連歳出は19年から8割増の519億ポンド。放置すれば29年度には700億ポンドを突破すると言われる。医師の判断も93%が「不適」とする。
国民に“働かなくてよい”という烙印を押してしまう制度である。
かつて英国病と呼ばれた停滞が、再び忍び寄っている。働く意欲を削ぐ社会は、国家そのものが衰弱する。日本も同じ道をたどるわけにはいかない。
さらに憂慮すべきは、NTTデータグループのトップが「AI時代だから週休3日制を導入すれば経済が広がる」と嘯いたことだ。AIに仕事をさせ、人間は休めばよいという思想。
そんなことがまかり通れば、社員は副業に走り、本業が疎かになるのは火を見るより明らかだ。そもそもNTTは国策企業の出自である。もっと謙虚になり、従業員が胸を張って働ける企業文化をつくるべきだ。
高市首相の労働時間上限緩和は、いまこの国が再び成長するための確かな道だと、私は考えている。なぜなら、人間は本来“働くからこそ人間”なのである。
働くことを誇りにできる国、働く者が鍛えられ成長できる国――その方向に舵を切らなければ、日本の未来はない。Goto


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