松屋銀座線100周年記念、100万円のおせち料理は芸術品だね。
11月に入り、今年もおせち料理商戦が本格化した。
正月の風物詩、おせち。だが、いまや「買うもの」になった。大量に作るから冷凍が当たり前、味は濃くなる。便利さを優先した結果、保存が目的の料理になってしまった。
私は古い人間なのかもしれないが、正月に“便利”を求めることに、どうも違和感を覚える。やはり、家族でワイワイ言いながら手づくりするおせちこそ、本来の姿ではないか。
さて、主要百貨店のおせちは見事な二極化だ。
世相を映す鏡である。
長引く物価高で節約志向が強まるなか、ボリュームや品目を増やして「コスパ重視」をうたうものが目立つ。だが、それでも安くはない。
東京のそごう西武では4段重で2万3,220円。一段6,000円だそうだが、どう考えても高い。東武百貨店は「肉おせち」なる一段重を打ち出し、12種類4キロで3万5,640円。高いが売れるという。
松屋銀座の調査では、「正月は自宅や実家で過ごす」と答えた人が87.6%。おせちを“買う”か“一部作る”と答えた人が77%。この数字を見れば、商戦に力が入るのも当然だ。
だが、食材高騰で価格設定には苦慮しているようで、タカシマヤの人気定番おせちは2万3,000円に5%上乗せ。大丸は3万1,500円に値上げ。これらがコスパ型。
一方で、上を見ればキリがない。
京都や東京の名店、ホテルとコラボした高級おせちは10万円超えも珍しくない。松屋銀座は百周年記念で100万円のおせちを販売。有田焼の皿付きで“一点もの”だそうだ。もはや「おせち」ではなく「芸術品」だ。だが、売れるのだから恐れ入る。
思えば、いつの間にか“おせちは買うもの”になった。
スマホでレシピも見られる時代。
正月くらい楽したいという気持ちも理解できる。だが、やたらと休みが多い現代だからこそ、家族でスーパーに買い出しに行き、ワイワイ言いながら作る。そんな年末年始も悪くない。
――よし、今年は挑戦してみようか。
そう意気込んでも、家人の冷ややかな視線が目に浮かぶ。
「ほら見たことか、やっぱり予約すればよかった」とブツブツ言われ、正月早々叱られる未来は見えている。
それでもいい。
おせちを通して、家族が集い、笑い、語らう。
その時間こそ、何よりのごちそうではないだろうか。まぁ殊勝なことを言ってはいるが。
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