高市内閣支持率

新聞よ、世論調査に安住するな

次年度予算の概要が120兆円、過去最高額で示された。経済再生、物価高対策、防衛費の増額。高支持率を背景にした高市内閣の大型予算である。

是非はさておき、これほど国の進路が明確に打ち出された局面で、新聞は何をどう伝えているのか。20日前後に実施された各紙の全国世論調査を見て、率直な違和感を覚えた。

読売新聞の内閣支持率は73%。前回調査から横ばいとはいえ、発足以降の最高水準を維持している。不支持率は14%と低く、補正予算を含む積極財政、子ども一人当たり2万円の給付、冬場の電気・ガス代補助など、現役世代・若年層の評価が高いという分析も腑に落ちる。有言実行、歯切れのよい国会答弁への期待も大きいのだろう。

日経新聞も支持率75%と高水準を維持。日銀の利上げ判断を55%が評価したという数字には、むしろ国民の戸惑いが透けて見える。

一方で、共同通信、毎日新聞は67%。朝h新聞は68%。読売・日経との差は5〜8ポイント。この差をどう説明するのか。記事を読めば理由は概ね同じなのに、なぜ数字だけが違うのか。ここに新聞社の「スタンス」が透けて見える。

報道が批判的であれば支持率は下がり、肯定的であれば上がる。もしそうなら、読者は一紙だけを読んでいては危うい。新聞は読み比べてこそ意味がある。文藝春秋の「報道エンマ帳・報道にモノ申す」が痛快なのは、まさにそこを突いているからだ。

朝日は高市内閣に「期待感先行、山高ければ谷深し」と水を差し、毎日は「ロケットスタートに早期解散論」と先回りして失速を占う。しかし、自社の世論調査に自信があるなら、政権の堅調さと野党の低調さを同時に精査し、双方に課題を突きつけてこそ新聞ではないか。予断と色眼鏡が先に立ち、取材が追いついていない。そう感じざるを得ない。

これでは、新聞の看板であるはずの政治報道すら、読むことをためらわせる。毎月の全国世論調査も、数字を並べるだけなら、その役割と価値は問われて然るべきだろう。

55年体制の残像を引きずったままの硬直した政治報道を、いい加減、打ち破れ。新聞命(しんぶんいのち)新聞を愛してきたからこそ、私は言いたい。
新聞よ、もっと深く掘れ。もっと鍛えろ。世論に寄り添い、同時に世論を鍛える存在であれ・・と。新聞命の切なる願いである。Goto

コメント