難しいを優しく・・・

現代の先哲から──若い経営者への金言に学ぶ

残念ながら私は、生前の船井幸雄さんにお会いする機会には恵まれなかった。講演も聞けず、握手もできなかった。ただ、著作は読みました。何冊も。

ページをめくるたび、「あぁ、この人は“経営の先生”でありながら“人間の先生”だ」と唸らされたものだ。まさに現代の先哲だと。

なにせ、難しい経営論を語っているはずなのに、読むと妙に元気になる。「おい、そんな簡単でいいのか」と思うのに、読後には“よし、今日から素直にやってみよう”と身体が前へ動く。

これが、船井流の魔力である。船井さんは、若い経営者に向けてこう言った。「素直がいちばん。素直な人は伸びる」幸之助氏もだ。

シンプルだが、これが案外むずかしい。
“年齢とともに素直さは体内から蒸発していく”と私は思っていて、気がつくと偉そうな自分が出てくる。私なんぞその典型だ。あかん。
それを戒めるように、この一言が胸に刺さる。

次に有名なのは、「プラス発想をしなさい。成功者は例外なくプラス発想家です。マイナス発想は才能いらず、誰でもすぐできる」プラス発想は修行が要る。だが、私はこれは大丈夫だ。そもそもが天然なのだから。クヨクヨはなしだ。
プラス発想に切り替えた途端、景色が変わるのが面白い。

“問題”が“材料”に見える。
“苦境”が“鍛錬の場”に変わる。
不思議な話だが、心の姿勢が事業そのものの姿を変えてしまうのだ。

そして、船井流の三原則として有名なのが、「素直・プラス発想・勉強好き」の最後、勉強好きだ。私は学ことを修養と言うが、船井さんは勉強好きという。

この三つが揃うと、経営者は驚くほど伸びるという。勉強好きといっても、机に向かうだけではない。現場から学び、人から学び、失敗から学ぶこと――。
要するに「昨日の自分より、今日の自分をちょっとだけ賢くする」営みだ。

また、私は先哲の、この言葉がとても好きだ。「“ありがとう”を一日千回言える経営者になりなさい」千回は無理だ。だが、100回ならいけるかもしれない。私は100回を奨励し実践している。経営が上向くとの実感はないが。いや10回でもいいのだが、言葉にすれば心が整う。感謝は経営のエネルギー源であり、謙虚さの源泉である。“ありがとう”の総量が、そのまま会社の活力になる。

中広グループの同志にもよく言うが、結局のところ、経営は人間がつくる。
人が輝けば、会社は必ず伸びる。

船井さんは最後にこう言う。
「経営とは、利他の行為の積み重ねである」社員を活かし、地域を活かし、未来を活かす。その総量が“繁栄”となって企業に返ってくる。
これほどシンプルで、これほど奥深い言葉はない。

私はつくづく思う。もし生前にお会いできたら、「先生、私はまだ“素直”が足りません。どうすればよいですか?」と相談しただろう。

きっと船井さんは、にこりと笑って、「素直にそう言えるなら、もう半分できていますよ」と励ましてくれたに違いない。

会えなかったことは残念だが、
その教えは今も生きている。

若い経営者にも、同志にも、そして何より自分自身に、折に触れて思い返したい金言である。Goto

コメント