紙は死なず

人の心を動かし続ける価値を掲載できれば。

出版不況と言われて久しい。取り分け雑誌や週刊誌の世界は、休刊、廃刊の話題が後を絶たない。「紙の時代は終わった」とまで言われる。

そんな中で、実に興味深い現象が起きている。『週刊少年ジャンプ』33号である。
「ONE PIECE」連載25周年を記念した主人公・モンキー・D・ルフィのプロモーションカードを付録に付けたところ、コンビニや書店では完売が相次いだ。

集英社は通常より50万部も増刷し、電子版定期購読者向けに応募サービスまで用意したが、それでも需要は想定を上回った。大手書店では「一人一冊まで」「並び直し禁止」と購入制限を設け、通常の約5倍の冊数を入荷したにもかかわらず売り切れたという。しかも購入者の6~7割がインバウンドだったとの報道には驚かされる。

定価340円の雑誌が、発売前からフリマサイトでは予約転売され、数千円から数万円で出品される異常事態となった。現在でもカード単体で約1000円、本誌付きでは2000円前後で取引されているという。

なぜ、ここまでの現象になったのか。

理由は四つある。
第一に、「ONE PIECE」という世界的ブランドの圧倒的な力である。漫画の人気だけではない。アニメ、映画、ゲーム、カードゲームへと広がり、一つの作品が巨大な経済圏を築いている。ファンにとって限定カードは、単なる付録ではなく「手に入れるべき記念品」なのである。

第二に、「限定」という希少性である。人間は「今しか手に入らない」と思うと、理性より感情が先に動く。「欲しい」よりも「失いたくない」という心理が働き、購買意欲は一気に高まる。

第三に、転売市場の存在である。インターネットで誰もが簡単に売買できる時代だ。利益を目的とする買い占めが起こり、本当に欲しい子どもや読者の手に届きにくくなる。市場原理とはいえ、少し寂しい現実でもある。

そして第四に、日本のコンテンツが世界中から支持されていることだ。購入者の多くが外国人旅行者だったという事実は、「漫画大国・日本」の底力を物語っている。

私は、この出来事からもう一つ学んだ。
「紙は弱くなった」のではない。「紙だけでは売れなくなった」のである。
魅力あるコンテンツと、限定性、体験価値が組み合わされた時、人は今なお書店へ足を運び、紙を求める。デジタルでは代替できない「所有する喜び」が、そこにはある。

出版業界は苦しい。しかし、今回の『週刊少年ジャンプ』騒動は、「読者が求める価値」を創造できれば、紙媒体にはまだまだ大きな可能性があることを証明した。
「紙は死なない」・・人の心を動かす価値を載せ続ける限り、その生命力は決して失われないのである。Goto

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