青雲の志を、世界へ。

横浜高、織田翔希投手、大リーグを目指すに、ひと言。

10月22日、プロ野球のドラフト会議が開かれます。今年、私が注目しているのは、横浜高校の織田翔希投手です。この夏の甲子園で156キロを記録した右腕は、15日の記者会見で、世界一の投手を目指して米国に挑戦する意思を表明しました。米球界入りだけでなく、米国の大学への進学も選択肢にあるそうです。

まだ高校生です。悩みに悩んだでしょう。それでも、自分の人生を自分で決めた。その決断に、私は心から拍手を送りたいと思います。

有望な選手が直接米国へ渡れば、日本のプロ野球はどうなるのか。心配する声は理解できます。しかし、若者が世界一を目指すと言っているのです。まずは「よく決めた。頑張ってこい」と、背中を押してやれないものでしょうか。

私の思いは二つあります。

一つは、この若者の挑戦に、日本の未来への希望を感じるということです。

バブル崩壊後の長い停滞の中で、私たちは、いつの間にか小さくまとまることに慣れてしまったのではないでしょうか。できない理由を並べ、失敗を恐れ、今いる場所の居心地を守る。これは若者だけの問題ではありません。挑戦を勧めるべき私たち大人が、先に腰を引いてはいないかと思うのです。

もちろん、日本で努力することにも大きな価値があります。しかし、日本だけで物事が完結する時代ではありません。違う言葉、違う文化、違う価値観の中へ飛び込み、自分の力を試す。その経験が人間の器を大きくするのではないでしょうか。

織田選手は、若いうちから英語に触れることも重視しているといいます。これは本当に正しいです。野球の技術だけでなく、自分の意思を自分の言葉で伝える力を身につけようとしている。頼もしいではありませんか。

すぐにメジャーで活躍できる保証などありません。マイナーで苦労するかもしれない。大学で学びながら野球を続ける道もあるでしょう。日本の大学で4年間学んでプロを目指す若者がいるように、米国で学び、鍛え、夢を追う若者がいてもいい。遠回りに見える時間も、人間を育てる大切な年月です。

もう一つは、日本のプロ野球界こそ、自らの魅力を磨いてほしいということです。

2008年、田澤純一投手が日本の球団に指名回避を求め、米国へ挑戦した際、海外でプレーした選手の日本球界入りを一定期間制限する、いわゆる「田澤ルール」が設けられました。これは2020年9月に撤廃されました。公正取引委員会も独占禁止法違反の疑いで調査し、撤廃を受けて調査を終了しています。

若者の可能性を、組織の都合で狭めてはならない。私はそう思います。

現在、高校生が海外を含むプロ球団と交渉するには、プロ野球志望届が必要です。ただし、届け出は日本の球団への入団を約束するものではありません。織田選手がドラフトで指名される可能性はありますが、それで米国への道が閉ざされるわけではないのです。

私は、巨人が1位指名に踏み切るのではないかという気もしています。あくまで私の予想です。しかし、どの球団が指名するとしても、本人の志を尊重し、その将来について誠実に向き合ってほしいと思います。

待遇についても考える必要があります。日本の新人契約金は、1億円に出来高払い5000万円を加えた額が最高条件として定着しています。一方、昨年、東京の桐朋高校からアスレチックス入りした森井翔太郎選手の契約金は、約2億3000万円と報じられました。

お金がすべてではありません。しかし、才能や努力への評価を、待遇で示すことも大切です。優秀な人材に来てほしいなら、報酬も、育成環境も、その先の人生を支える仕組みも磨く。「ここで野球をしたい」と若者に選ばれる球界になってほしい。これは、私たち企業経営者にも、そのまま返ってくる問いです。

人間学の根本は、人を大切にすることだと私は考えます。人を大切にするとは、その人が抱く志を大切にすることでもあります。挑戦する者を励まし、つまずいた時には立ち上がる手を差し伸べる。努力が実を結ぶよう、周囲も知恵と力を尽くす。そんな社会でありたいものです。

努力が必ず勝利に結びつくとは限りません。それでも、目標に向かって積み重ねた日々は、人を磨きます。壁にぶつかれば謙虚さを知り、支えてもらえば感謝を知る。そして、自分が得た力を誰かのために使える人間になる。世界一を目指す道が、人間として大きく育つ道にもなってほしいと願います。

最後に、最愛のドラゴンズについて一言。ソフトバンクを5度の日本一に導いた工藤公康さんが、新監督に就任しました。ぜひ、ドラゴンズに優勝の喜びを取り戻していただきたい。

そして、お願いがあります。岐阜県飛騨市出身の根尾昂選手です。大阪桐蔭から4球団の1位指名が競合し、ドラゴンズに入った、私たち岐阜県人の希望です。

思うように花開かない時間に、本人にしか分からない苦労があるでしょう。どうか、その力が実を結ぶ道を、ともに見つけていただきたい。挑戦を諦めずにいる若者が輝く姿を、私は見たいのです。

世界へ飛び立つ織田選手も、日本で道を切り開こうとする根尾選手も、志に向かって努力する若者です。その努力が報われる社会にしたい。そのために、大人が果たす役割は小さくありません。「世界一の投手になりたい」。この青雲の志に、私は再び昇る日本の朝日を見る思いがします。

22日のドラフト会議。どこが誰を指名するか。
注視したい。Goto

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