世界有数の観光地・ベネチア・市民が示唆を・・・
読売新聞に世界深層という月に1回掲載される特集ページがあります。
新聞はニュース報道だけではなく、生きるためになる情報を与えてくれると
改めて思う紙面です。タイトルはin-depth/意味は「掘り下げた」です。
テーマはイタリアの観光名所・年間3000万人が訪れるベネチアの
オーバーツーリズム(観光公害)を例にとって観光を考えるです。
ベネチアの人口は1980年代初頭には10万人を超えていたのですが、
減少し続け今年の9月には4万9308人にまで落ち込みました。なぜか・・
市民の声です。
ベネチアの旧市街地は約8平方キロメートル・・・一日多い時には20万人の観光客が。「日中はまともに歩けない」「ついに観光客が人口を超えてしまった」
「観光がなければ食べていけないが、多すぎては息ができない。
我々は観光に生かされ、観光に殺されてもいる」と深刻です。
日本ではそこまでではありませんが、コロナ前の京都がそんな状況でした。
市民からは生活に支障をきたすと、オーバーツーリズムの声が上がりました。
ベネチアとは一緒にならないかも知れませんが・・・問題が起こっています。
イタリアではコロナによる入国制限が解除された昨年6月から観光客が急増。
ローマやフィレンツェなどでは落書きや観光資源の損壊行為が相次ぎ問題となっています。22年・刑法に文化財に対する損壊罪が新設されました。法定刑は最高禁錮5年・罰金5000ユーロです。
またこの4月からは文化財を傷つける行為を厳罰化する「環境破壊行為法」の審議も進んでいます。知事による行政処分で最高6万ユーロの罰金を科すことができる内容で、落書きなど迷惑行為の抑止力にしたい考えです。
観光立国を目指す日本です。コロナ前、インバウンドがどっと押しかけた際、
オーバーツーリズムが問題になりました。今年、水際対策が緩和され、1500万人を超すインバウンドです。この調子でいけば、目標の5000万人も数年のうちに実現する勢いです。
もちろん、人流を制限されていた日本人も景気回復と観光ブームに乗って、
名だたる観光地に押し寄せている状況です。であれば、世界屈指の観光立国イタリアに倣って、「環境破壊行為防止法」をつくる時が今ではないかと思います。
読売新聞の記事はそのことを示唆しているのではないでしょうか。
ベネチアの話に戻りますが・・・
人口が減少した理由は、家賃の高騰です。
10年前と比べて約3倍になり、人が住めなくなりました。
ですから、市民が市外に出ていったのです。
また、ベネチアといえば職人の街。ガラス・レース・鋳物・仮面などの
工芸品、時計などの製造業が発達しました。しかし、今では工芸職人組合に
よると02年に461人いた職人は22年に226にまで減少。
一概に観光のせいではありませんが、観光客が高級な工芸品よりも
中国産の安価な紛い物に目を向ける悲しい現実があります。
街の経済がすべて、観光客目当て移行し、本来あるべき産業が衰退する・・
そんな現象は将来の日本でも起こり得ることではないでしょうか。
観光産業も立派な産業です。産業立国を目指すのも考え方ですが、
観光というと私は・・なぜかエジプトを思います。ピラミッドにスフィンクス、
5000年以上前の観光資源で経済を成り立たせる姿。過去の遺物に縋って生きる国民から未来が見えません。
産業が観光だけになれば「観光に生かされ、観光に殺されてもいる」そんな
ベネチア市民の声が耳に残ります。観光立国・日本を目指す・・今一度真剣にin-depth(掘り下げ)てみる必要があるのではないでしょうか。Goto
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