鳥媒花

寒椿を啄むメジロは黙して季節を知る・・・

如月です。旧暦二月は寒さのために衣を重ねる「衣更着(きさらぎ)」が語源という。早朝のウォーキングコース、冬山眠る、とはよく言ったものだ。故郷・岐阜市にどっしりと構える金華山も、色を深く沈め、眠りの底にある。

だが、道すがら真紅のツバキが咲き、蜜を求めてメジロが寄ってくる。ツバキは日本原産の常緑樹で、鳥に受粉を委ねる「鳥媒花」。春はまだ遠い。それでも大自然は巡り、確かに時は前へ進んでいる。その営みに、思わずにやりとする。

一方で、人の営みはどうだろう。
総選挙がかまびしい。党首たちの訴えは宙を舞い、心に届かない。
なぜか。消費税の減税が政策の中心・如何にもポピリズムであり、
言葉が軽いからだ。覚悟が見えないからだ。

先日のダボス会議。トランプ大統領から「51番目の州になれ」と揶揄されたカナダの首相、マーク・カーニーは、世界に向けて明言した。「覇権主義が強まる中、従来の国際秩序は終わった」と。そして「軍事力や経済力に目を奪われ、正当性、誠実さ、ルールに基づく力の強さを見失ってはならない」と訴えた。

米国の関税圧力に怯え、譲歩を重ねれば、法の支配も自由貿易も守れない――
誰もが思いながら口にできないことを、彼は言い切った。背筋が伸びる。

カーニー氏はカナダ・英国で中央銀行総裁として政治の圧力と向き合ってきた人物だ。人間の背骨がある。対して、ドラルド・トランプは利下げ要求に従わぬジェローム・パウエルへの攻撃を強める。次の人選を急ぐ。
欧州やカナダ、韓国、オーストラリアの中銀トップは即座に支持声明を出した。

だが、日本銀行総裁の植田和男は加わらない。
「米国の内政問題」という釈明。トランプとの関係を重視する高市早苗政権に配慮したのではないか。だが、それで済む話だろうか。なぜか、恥ずかしい。

政治とは立場ではなく、人間の在り方だ。
この総選挙で際立たねばならないのは政策の違い以前に、日本の立ち位置である。51番目の州より劣る。政治リーダーの人間的成熟の乏しさである。誰ひとりとして、カーニー首相のような気骨を感じさせない。その事実が、何より淋しい。

寒椿を啄(ついば)むメジロは、黙して季節を知る。人は、言葉を持ちながら、なぜこれほど季節に鈍感なのか。この国の政治の寒さに、メジロの方が呆れている――そんな気がしてならない。Goto

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