75歳定年制

今回も、日本の根幹を揺るがす「少子化」を直視してみたい。

日本で最後に出生数が200万人を超えたのは1974年である。この年の合計特殊出生率は2.05。ここで言う合計特殊出生率とは、一人の女性が生涯に産む子どもの平均数を示す指標であり、人口の将来を占う極めて重要な数値である。

そしてもう一つ、「人口置換水準」という言葉がある。これは親世代と同じ人口規模を維持するために必要な出生率で、日本ではおおよそ2.07とされる。この水準を下回ると、長期的には人口は減少へと向かう。1974年は、まさにその分岐点であった。

以降、日本は静かに、しかし確実に人口減少社会へと足を踏み入れた。2016年以降、出生率は9年連続で低下し、2024年には1.15と過去最低水準を記録した。2025年の人口動態統計では、出生数より死亡数が大きく上回り、年間で約100万人もの人口が減少した。これは政令指定都市一つ分が一年で消えるに等しい。

なぜ、ここまで少子化が進んだのか。理由は複合的だが、核心は明確である。

第一に経済的不安。子育てにかかる費用、将来への不透明感。

第二に働き方の問題。長時間労働、育児との両立の困難さ。

第三に価値観の変化。結婚や出産が「必須」ではなくなった社会構造である。

対策は明らかだ。「働きながら安心して子育てができる社会」を本気で作ることに尽きる。ワークライフバランスなどという言葉を、単なるスローガンや福利厚生の一環として語っている余裕はない。これは女性支援の話ではない。国家の存亡に関わる戦略そのものである。

このまま人口減少が続けばどうなるか。

2056年には1億人を割り込み、2088年には7100万人台。さらに2120年には5000万人を下回り、明治期の人口規模に戻ると予測されている。市場は縮小し、労働力は不足し、地域は衰退し、国家の活力は失われる。

では、人口減少は即ち国力の低下なのか。必ずしもそうとは言い切れない。ノルウェーは人口500万人台でも豊かであり、英国は6900万人規模で国家を維持している。重要なのは、国民の生産が消費を支え、持続可能な社会構造を築けるかどうかである。

しかし現実は厳しい。現行の少子化対策で社会が劇的に変わるとは考えにくい。ならばどうするか。日本は「少子化」と「長寿化」が同時進行する稀有な国である。寿命は20年、30年と延びたにもかかわらず、退職年齢はわずか5年、10年しか延びていない。

ここで、あえて申し上げる。批判を覚悟の上で言うならば、少子化対策は「やれることは全てやる」しかない。財源が問題であれば、高齢者福祉の見直しも議論すべきだ。そして何よりも急ぐべきは、75歳定年制の導入である。

高齢者があと10年働けば、年金・医療・介護における「支える側」と「支えられる側」の構造は一変する。これは最も即効性のある改革であり、政治の決断ひとつで実現可能な施策だ。

少子化は静かに進むが、その影響は確実に社会を蝕む。

ならば、静かに議論している場合ではない。

未来を明るくするのは、覚悟ある決断と実

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