12年ぶり、高水準の倒産。

昨年度の企業倒産の増加という現実を、静かに見つめてみたい。

東京商工リサーチの発表によれば、2025年度、負債額1000万円以上の全国倒産件数は前年度比4%増の1万505件。4年連続の増加であり、実に12年ぶりの高水準である。数字だけを見れば重い現実だが、その内実を丁寧に読み解く必要がある。

倒産企業の実に77%が従業員5人未満の小規模事業者である。一方で負債総額は34%減の1兆5687億円と、大型倒産は相対的に少ない。つまり、社会全体を揺るがす構造的崩壊というより、体力の乏しい小規模事業者に淘汰圧力が強まっている構図が浮かび上がる。

背景は明確だ。物価高、人件費の上昇、そして何より深刻な人手不足である。人手不足を主因とする倒産は43%増と過去最多。日本銀行の短観でも、全産業・全規模で人手不足感は34年ぶりの水準に達している。人材確保のための賃上げが資金繰りを圧迫し、経営の持続可能性を奪っているのである。

さらに、2026年度は不透明感が一層強まる。中東情勢、とりわけイランを巡る緊張はエネルギー価格を押し上げ、日本経済に重くのしかかる可能性が高い。運輸業をはじめ、コスト上昇の影響を直接受ける業種では、倒産の増加が現実味を帯びるだろう。

では、この流れをどう捉えるべきか。

感情的には「倒産は悪」である。しかし、経済の原理から見れば、必ずしもそう単純ではない。慢性的な人手不足の中で、労働力が停滞する企業に留まり続けることは、社会全体の生産性を押し下げる。倒産によって人材が解放され、成長分野へと移動するならば、それは経済の新陳代謝とも言える。

過去、日本は幾度となく金融支援によって企業を延命させてきた。だが、その結果として生まれた「ゾンビ企業」が、成長の足かせとなった側面も否定できない。今、問われているのは、どこまでを守り、どこからを市場に委ねるか、その覚悟である。

冷徹に聞こえるかもしれない。しかし、資本主義の本質は、選択と集中にある。すべてを救うことはできない。だからこそ、意欲ある企業、変化に対応できる経営者が生き残り、次の時代を切り拓く。

無論、切り捨てるだけでは社会は成り立たない。再挑戦を可能にする制度設計、労働移動を支える教育と訓練、地域経済への丁寧な配慮は不可欠である。淘汰と同時に、再生の道を整えること。それが政治と社会の責任であろう。

倒産の増加は、危機であると同時に、構造転換の兆しでもある。この現実から目を背けず、あるがままに受け止め、次にどう活かすか。そこにこそ、日本経済再生の鍵があるのではないか。

厳しさの中にこそ、未来への芽は宿る。そう信じて、新年度を歩み出したい。Goto

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