ビールを苦くしないで。

9割超のシェア。そこに奢りがあるならぜひ、是正願いたいものです。

ずいぶん涼しくなりました。一汗かいて、冷えたビールが恋しくなる季節も過ぎたようです。私も年齢のせいか、以前に比べて飲む量は自然と減ってきました。これからは、丹精込めて造られたおいしいビールを、少しずつ味わう。そんな酒との付き合い方もいいのかなと思っています。

その一方で、ビール業界をめぐる気になるニュースがありましたね。公正取引委員会が、アサヒビール、キリンビール、サントリー、サッポロビールの大手4社を、独占禁止法違反の疑いで強制調査したというのです。

報道によれば、各社の担当者が非公式に集まり、ビール類の値上げ幅や時期を調整していた疑いがあるといいます。公取委は刑事告発も視野に調査していると報じられています。

もちろん、現時点では疑いの段階です。事実関係はこれから明らかになるでしょう。しかし、もし値上げを相談し、示し合わせていたのなら、これは見過ごせる問題ではありません。独占禁止法に触れる可能性があることを知りながら行っていたのだとすれば、企業のおごりではないでしょうか。日本を代表する大手企業として、倫理観が問われてしかるべきです。

市場が縮み、原材料価格が上がる。人口減少も進む。ビール各社が厳しい危機感を抱くのは理解できます。しかし、厳しい環境だからこそ、企業はそれぞれの工夫と努力で競い合うべきです。

価格を決めるのは、各社が自らの判断で行うこと。消費者から後ろ指を指されるような経営姿勢は、信頼を損ないます。

私もビール党の一人として、さまざまな銘柄を楽しんできました。地ビールやクラフトビールには、地域ごとの個性や造り手の思いがあります。一方、大手4社のビールは、手に取りやすい価格で広く親しまれてきました。ただ、飲み比べてみると、以前より味の違いが小さくなり、個性が薄れてきたように感じることもあります。もし、その背景に価格をめぐる不透明な関係があったのなら、なおさら残念です。

ノンアルコールビールについても、気になることがあります。酒税がかからない商品でありながら、各社の商品価格が似通って見える。もちろん、価格が近いというだけで不正があったとは言えません。ただ、消費者としては、価格がどう決まり、どんな競争が行われているのか知りたい。公取委には、必要に応じてこの点も確かめてほしいと思います。

新聞各紙の論調についても、私は読者として気になりました。朝日、毎日、日経、中日などが正面から問題を論じる一方、読売新聞の論調はやや甘いように感じました。広告の影響があったのではないかと決めつけることはできません。しかし、もし広告主への配慮が報道姿勢を左右するなら、それは新聞の役割を考えるうえで重大な問題です。新聞は、企業にとって都合の悪い事実にも向き合わなければなりません。

日本のビール市場が縮むなら、海外へ打って出る道もあるはずです。上手くいってないとの報はありますが、各社が競い、味や品質、地域性、新しい飲み方で世界の消費者をつかむ。そこにこそ、ビール会社の力を発揮してほしいと思います。

ビールは、人々の暮らしに寄り添ってきた身近な飲み物です。だからこそ、業界には正道を守り、消費者の信頼に応える姿勢を取り戻してほしい。今回の調査を出発点に、ビールそのものを心から楽しんでもらえる商品づくりと、正々堂々と競い合う業界へ再出発していただきたいと思います。Goto

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