ケープコート

「二度と戻れぬ扉」と「労働は自由への道」
もう何年前になるだろか?20年以上だろう。底冷えのする12月中旬。ポーランド、オシベンチム市を訪ねたのは。あの時ほど、心に衝撃を受けた場所はない。
薄く積もった雪を縫うように走る引き込み線路。どこまでも続く鉄条網の塀。簡素なレンガ造りの兵舎が並ぶ。その入り口の門には「労働は自由への道」と書かれてある。
中に入ると忘れてはならない悲惨な現実が展示されている「義手、義足の山。打ち捨てられた眼鏡のつる。シャワー室と称したガス室とその前後の部屋に置かれた服。それに、人の脂肪で作ったと言われる石鹸」が。
人間の尊厳とは何か。人間はどこまで残酷になれるのか?政治権力のおぞましさと、その果てに起こるものの現実の姿。僅か40年ほど前、国家と民族が犯した極悪非道を眼のあたりにして・・・・・・。
オシフェンチム市は、ナチスによってユダヤ人を大虐殺したアウシュビッツ強制収容所の地名です。
人類が忘れてはならない、20世紀最大の悲劇の現場です。
私は彼の本気度を疑っていましたが、核廃絶へロシアの大統領との真摯な話し合いに次いで、ラクイラのサミットでも、核軍縮を訴えたのには感激しています。米国オバマ大統領のことです。
そして、あえて家族。それも、黒人奴隷の子孫でもある夫人と二人の娘をつれて、アフリカ各地から集められた奴隷を米大陸に労働力として売った拠点となったガーナのケープコースト城の地下牢をを訪ねた記事を目にして。
彼は、命を賭して、人類の恒久平和と平等を願う大統領だ。人間の尊厳を考える事の出来る政治家だと改めて、敬意を表しました。
悲劇は2度と繰り返すまい。その心根にこそ、政治家としての要諦があると思うのですが。
広島、長崎と2度も核攻撃を受けた日本の政治家が、オバマ以上に人間の尊厳に反すりことに怒りを覚えないのはなぜでしょうか?反戦の思想を持たないのは・・・・・。私には不思議でなりません。
日本は世界唯一の被爆国。あの悲惨な被爆者の現状を忘れ去ったとは言わせない。
オバマの核軍縮に、ノーモア広島の思想を世界い訴えることこそ。日本の政治家の仕事だろう。
オバマ大統領が娘たちに、ケープコースト城の「二度と戻れぬ」扉に触れさせた記事を読んで。
アウシュビッツの強制収容所の風景が蘇りました。
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