酒の道

本を読みながら酒を飲む、そんな「読書バー」が静かなブームですって。
今年も夏が終わります。暦の上では8日の立秋を過ぎれば……秋ですが。
実感としては8月末に窓の下から虫の音が聞こえて夏去りぬです。
この夏に読もうと思って積んでいた本、意外と減らなかった。
秋の夜長に楽しみを伸ばすしかないのだが……
なぜ、思ったほどに消化できなかったのだろう……ふと考えてみると、
以前なら、好きな酒を手元に置いて……本に向かっていたのだが。
酒の量もほどほどのうちに本のページもほどほどしか進まなくなっているのが原因か。
お酒を嗜まない人には理解できないかも知れませんが……
人の脳には「酒の道」という回路があって、酒を飲むと通常とは別の道が開きます。
「酒を飲むと奇想天外なアイデアが浮かぶ」とか「酒を飲むと気が大きくなる」とか
「酒を飲むと人が変わる」とかいうのがそれです。
本を読みながら酒を飲むと、その内容は通常の回路で脳に収まるのではなく
「酒の道」を通って別回路に入ります。脳がどのようになっているのかは
わかりませんが。入った情報は脳で揉まれ「酒砦」に蓄積されます。
酒を飲みますと、その情報がベースになって、通常と違う思考が生まれるのではないかと
酒飲みの私は勝手な解釈をしています。でも、勝手な解釈もまんざらでもない話が。
「読書バー」なる酒を飲みながら文学や専門書に触れる本屋さんの空間が
静かなブームなんですって。(日経)……紹介のリードには「お酒の力を借りて
普段の自分から離れ、新たな本の世界に出会える」…「特に若い世代の心を掴んでいる」と。
なるほど、「酒の道」から脳へ情報を送り込んでいるということです。
村上春樹さんの長編小説「ノルウェー森」には「僕はビールを飲みながら、
台所のテーブルに向かって「車輪の下」を読み続けていた」そんな一節があり、
村上文学には他にもビールを飲みながら読書する人物が頻繁に。
「読書バー」のブームには、村上文学の影響もあるらしいと。
バーですが、夜は食事に利用する人も多く。本好きな人に喜ばれるメニューが。
太宰治の「人間失格」に登場する電気ブランだとか、有名作家の名物作品に
因んだお酒がずらりと並び、村上龍さんや伊坂幸太郎さんの作品にでてくる
軽食と同じメニューも楽しめるとか。こうなると、本を題材にした飲食業ですね。
だとすると、私のようなオールド愛読家からすれば、
「読書バー」ではなく池波正太郎さんの「剣客商売」や「鬼平犯科帳」に登場する
酒のつまみが揃っている「読書居酒屋」が良いのでは思うのですが、
そうなりますと酒は「日本酒」で……置いてある本は「時代物」ってことになるかな。
それだと歴女が集うか?
それにしても、「読書バー」で若い人たちが本と酒を楽しみながら、
情報が「酒の道」を通って脳が活性化し、新たな発想が生まれると良いですね。
私はといえば、「酒の道も怪しくなって」秋の夜長を酒なし・本のみで優先するしか、
ページが進まないのが残念ですが。Goto

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