NIE(教育に新聞を)

政府は国語を体系的・段階的に身に付けさせるカリキュラムに予算を。
私が尊敬する国立情報学研究所の教授であり
「教育のための化学研究所」の所長でもある新井紀子教授が、
朝日の「メデイア私評」コーナーで、実に蘊蓄深い論評をしています。
新井教授の著書は「AI・IoT時代」の本質を鋭く突く視点で、
どの本も読むに値しますが世の親と申しますか、教師を始め、教育を憂う大人には
『AIに負けない子どもを育てる』は必読書です。
OECD(経済協力機構)が15歳を対象に3年ごとに実施する、
国際的な学習到達度調査「PISA(ピサ)」の結果が公表され、
日本は数学や化学リテラシーではトップグループでしたが、
読解力は前回に続いて順位を下げました。
メディアはこりゃ大変と、読売はセンセーショナルに「国家の危機」と報じ、
朝日は教育のICT(情報通信技術)の「対応の遅れ」が原因だと制度を批判し、
毎日は「本を読まずスマホに没頭」が問題だと、犯人捜しに走りました。
新井教授。メディアの指摘は理解できるがと断って。
問題の本質はそこではない。アメリカよりも順位が下がったことを考えてみるべきだ。
移民大国アメリカは「両親が英語を話せない」生徒も多い。
経済格差も地域格差も激しい。だからこそであろう。
アメリカには「英語は母国語だから自然に身につく」という先入観がない。
多様な背景の生徒に対して、学習に必要となる英語を体系的・段階的に
身につけさせるカリキュラムの研究が盛んに行なわれている。
同時にそのカリキュラムの実践や教員の養成に対して、多くの予算が投じられている。
日本は移民が少なく、同質性が高いことから、学習スキルとして国語を
身につけさせる体系的カリキュラムを編む発想が極めて乏しいのが現状。
国民は誰でも「国語の問題」を理解し答えを考えることができると、
勘違いしているのではないか。そこが日本の教育の盲点ではと、新井教授は指摘する。
私もその通りだと思う。それに加えて、ここが重要ですが、
日本人の読解力を支えてきたのは、新聞の力です。家庭に新聞が配達されて、
それを、誰もが読む。そして理解しようとする、それが、これだけ新聞を購読しない
家庭が増えれば、国語を正確に理解できない生徒が増えて当然だと思う。
文科省は小中学校の指導要領でNIE(教育に新聞を)活動の推進を促していますが。
いかんせん、新聞を読んでいない教師が激増しているのです。
これでは文科省がいくらNIEを奨励しても、無理です。
となると、政府がアメリカ以上に「国語」を体系的・段階的に身につけるための
予算を組むべきではないでしょうか。
その前に、まずは親や教師が新聞をちゃんと読むことが重要ですが。Goto

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