菊池寛が泣いている

宮本輝さん、芥川賞選考委員から引退のはなむけか。
賞に値する作家になって欲しいです。
第162回芥川賞が発表され、文藝春秋3月号に掲載されました。
受賞された古川真人さんに心よりお祝い申し上げます。
私の愛読書の一つが「文藝春秋」です。もう何十年読んでいるでしょうか。
多分ですが「文藝春秋」を定期購読するようになってから、私の考え方の
角が取れたのではないかと思っています。以前は結構、偏向して世の中を見ていたので。
偏向とは「考え方が偏っていること」で、学生時代の過ごし方が尾を引いていたと
自己分析しています。その意味では「文藝春秋」を読み続けてきたことは、
私にとっては、左に曲がりたくなるハンドルを矯正する本だといえます。
それと、この10年ほどで読者が極端に高齢化と減少したせいなのでしょうか。
特集が「健康」や「終活」の話ばかり。これでは、若い読者を獲得するのは難しい。
私の持論でいえば「文藝春秋」の編集長以下、50代以上の編集者を
すべて、若い人に入れ替える勇気がないと「文藝春秋」の寿命もそんなに長くないと思います。
古希過ぎの私であっても、老後の話や病気の話をわざわざ「文藝春秋」から知りたくもない。
いつでも定期購読を辞めようと思っているのですが。
年2回、芥川賞が発表され、選者がその選考について論じるのが楽しみですから、
辛うじて踏みとどまっているのですが。
今回の選考に関して、選考委員を代表して受賞作品決定後の島田雅彦さんの記者会見
「あやうく受賞作品なしになりそうだったのを何とか回避できた」との苦渋の発言。
過去数十年に渡り芥川賞作品を文藝春秋で読んできた私。
どんな難解な小説でも数ページ読めば流れは掴めるのですが。
最後まで、ページを捲るのが辛くて読むに耐えられない受賞作は初めてでした。
これは私の感想ですから、意味のないものです。
私は芥川賞はこれで終わりだな、と思いました。
理由は二つです。一つはこの駄作が受賞に及んだのは、この選考を最後に
30年以上選考委員を務めてきた「宮本輝」さんが委員から引退します。
ご苦労様でした。宮本さんの芥川賞の論評はいつも慈愛に満ちていました。
その宮本輝さんが推したが故に「駄作」であろうと彼に華を持たせた。
もう一つは、過去、1980年代は全25回中9回「受賞作なし」1990年代になると1回。
2010年代も1回。第145回以後「必ず受賞作品」が決められています。
出版業界不況の折です。駄作だろうが、何だろうが兎にも角にも、
受賞作品を出して小説に目を向けさせねばならないという業界の商業主義が
「受賞作品なし」の結果を回避させた。
他の賞だが「すばるクリティーク賞」も「群像新人評論賞」も今年は「受賞作品なし」です。
文藝春秋が菊池寛によって創刊され、芥川賞が新人作家の登竜門として、
日本文学の一つの試金石であった歴史は、先輩、選考委員の花道に使われ、
売らんかなの出版業界を象徴するようでは、菊池寛が泣いてはいないだろうか。
このまま芥川賞を続けるならば、選考委員全員が交代するか、
それとも、一度やめてみるしか道はないと思うのですが。
でもです。生意気を申す私は死ぬまで「文藝春秋」の購読は続けます。Goto

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