ビールと税と人情と

酒なんか呑まねば良いのにねぇ。

近所の生協へ出かけた。
友人が来る。彼は筋金入りのビール党だ。冷蔵庫の在庫が心もとない。ならばとビールコーナーへ。

いやはや、今や百花繚乱。黄金色の缶がずらりと並ぶ。目移りするほどだが、一角だけ棚が空いている。札には「オリオンビール」。なるほど、売り切れか。
最近、東証プライムに上場した人気で飛ぶように売れているらしい。沖縄で飲めば最高のオリオンも、岐阜の寒風の中ではどうか。などとつぶやきながら、ふと思う。

創業は1957年、当初は「沖縄ビール」。戦後復興の象徴のような会社だ。本土復帰後は大手と競争、苦戦を強いられたが、2019年に野村證券と米投資ファンドが総額570億円で買収。経営を立て直し、25年決算は過去最高の278億円。お見事。沖縄経済にも貢献している。

ただし、来年10月には県内限定の酒税軽減措置が廃止される。そこを見越した上場なら、いやはや、野村の算盤勘定はさすがである。
したたかとはこのことだ。

もっとも、酒造業界というのは、常に“税”との戦いの歴史である。
庶民の楽しみである「第三のビール」など、税率が上がったり下がったり。お上の都合で右往左往。まるで、庶民の晩酌を実験台にしているかのようだ。
それでも私たちは飲む。だって、飲まなきゃやってられないのだから。

ところで、ビール大瓶がなぜ「633ミリ」かご存知か。
昭和15年の酒税法によって製造量と出荷量に課税され、煩雑な税手続きを避けるために、戦中に瓶の容量を統一したのが由来。いちばん小さい瓶に合わせて633ミリに決めたという。小瓶の334ミリもその名残。つまり、すべては「税収」の都合。酒の文化ではなく、国の財布が基準だった。
いやはや、なんとも“税の国”ニッポンらしい話ではないか。

瓶ビールは、人と人とをつなぐ不思議な力を持つ。
自然に注ぎ合い、会話が弾む。缶ではそれができん。
だから私はキリンラガーの大瓶を探したのだが、生協の店員さんいわく「大瓶は扱っておりません」。仕方なく缶を2ケース抱えて帰路に。

外は木枯らし。
どうせ冷える夜、岐阜の地酒をぬる燗で一献。
やっぱり、これが一番の“景気対策”かもしれぬ。
なぁ・・・老たる我が友よ、ご同輩よ・・・Goto

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