すべての新聞人に購読を薦める。
私は毎朝、全国紙の朝日新聞、読売新聞、毎日新聞をはじめ6紙に目を通す。政治記事のスタンスの違いは実に興味深い。だが近年、新聞の影響力低下を肌で感じる。
最盛期5376万部(1997年)あった発行部数は、いまや2486万部(2025年10月・104紙)を下回る。出版市場も1兆円を割り込んだ。新聞の役割の一つであった書籍広告の力も弱まった。出版不況と新聞部数減少は無縁ではない。
そのなかで、私が毎週楽しみにしているのが、宮城・石巻から届く石巻日日新聞である。地域の息遣いが聞こえる紙面だ。
石巻市北上町の釣石神社。山腹から突き出た巨岩「男石」は、宮城県沖地震や東日本大震災にも耐え、「落ちそうで落ちない」合格祈願の象徴となった。受験生を抱える家族が祈り、兄が合格し末息子も願う――そんな記事に触れるたび、これぞ地域密着の新聞だと胸が熱くなる。
本書『石巻こども記者魂!』は、その石巻日日新聞から生まれた「石巻日日こども新聞」の軌跡を描く。著者はなかのかおりさん、出版社は静山社。絵はonocoさん。子ども向けに書かれた一冊だが、私は日本中の新聞人に読んでほしいと心から願う。
東日本大震災直後、「子どもが気持ちや感情を表現する場がいる」と立ち上がったのが石巻在住の太田倫子さん。子ども未来研究所を設立し、石巻日日新聞社の近江社長が本格支援。震災伝承館に毎週土曜集まり、編集会議を重ねた。
中学生以上が記者となり、小学生も加わる。第一号は10カ所以上を取材し、記事も写真も自ら担当。のちに新聞社へ入社した元子ども記者もいるという。まさに記者の原点だ。
子どもたちは被災地の「今」を自分の言葉で伝えた。悲しみも怒りも希望も、正面から向き合い、書いた。忖度も打算もない。ただ、伝えたいという純粋な衝動。
新聞とは本来、そういう魂から生まれるものではないか。石巻日日こども新聞は2023年3月11日発行の45号で一時休刊したが、その歩みは消えない。なお同紙は第55回吉川英治文学賞を受賞している。
新聞が揺れている時代だからこそ、本書は重い。政治的立場の違いを超え、地域に根を張り、人の声をすくい上げる。それが新聞の使命だと、子どもたちが教えてくれる。紙はオールドメディアではない。魂を宿す媒体である。
『石巻こども記者魂!』。子ども向けの装いに油断してはならない。
ここには新聞の未来がある。すべての新聞人に捧げたい一冊だ。
最後に、子どもたちに表現の場を与え続けた太田倫子氏に、心からの感謝と敬意を表します。あなたの志は、確かに次世代へ受け継がれています。Goto



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