おらほの伝統芸能

未来に守り育てたい。

私の愛読紙、石巻日日新聞。東日本大震災の際、停電の中で手書きの壁新聞を発行し続けたことで知られる、私が心から敬意を抱く新聞である。私はこのブログで、宮城県石巻地区(石巻市、東松島市、女川町)の話題を月に一度は取り上げたいと思い続けてきた。

今月号で目に留まったのは、「おがつ若葉祭」である。石巻市雄勝地区に伝わる郷土芸能を一堂に集めた初めての催しで、地域の人々の熱意が伝わる実に素晴らしい祭りだった。

祭りの会場では、まず「胴ばやし獅子舞味噌作愛好連」が登場し、獅子が会場を巡って邪気を払った。獅子舞は古くから五穀豊穣、無病息災、家内安全を祈願する民俗芸能である。獅子は神の使いとされ、その口で頭を噛まれると魔除けになり福が訪れると伝えられてきた。全国各地に伝承されるが、その根底にあるのは「地域の人々の暮らしを守りたい」という先人たちの祈りである。

祭りの先陣を切ったのは「雄勝町伊達の黒船太鼓保存会」。勇壮な太鼓の響きが雄勝の山々と海にこだました。黒船太鼓は、幕末に雄勝沖へ現れた異国船の姿や、海とともに生きてきた人々の力強さを表現した創作郷土芸能である。

過疎化が進む中で地域を元気づけようと住民たちが立ち上がり、若者たちへ伝統をつなぐ願いを込めて育ててきた。腹の底まで響く太鼓の音は、まさに雄勝の魂そのものだ。

そして祭りのトリを飾ったのが「雄勝法印神楽保存会」である。法印神楽は東北地方各地に伝わる山伏神楽の流れをくむ伝統芸能で、神々への奉納を目的として受け継がれてきた。

太鼓や笛に合わせて舞われる神楽は、豊作や大漁、家内安全を祈願する神聖な舞である。かつては地域の祭礼に欠かせない存在だったが、担い手不足に悩む地域も少なくない。それでも保存会の皆さんは誇りを持って継承し、厳かな舞を後世へ伝えている。

特別ゲストとして登場した岩手県北上市の口内鬼剣舞保存会も見事。鬼の面を付け、勇壮に舞う姿は見る者を圧倒する。念仏踊りを起源とし、先祖供養や五穀豊穣への祈りを込めた伝統芸能で、その躍動感はまさに東北の魂を体現していた。

しかし、日本中どこでも伝統芸能の継承は容易ではない。少子高齢化、人口減少、若者の都市部流出、価値観の多様化、地域コミュニティの弱体化。さらに保存や運営に必要な資金や人材の不足も深刻である。

伝統は残そうと思うだけでは残らない。地域の人々が汗を流し、次世代へ手渡そうと努力して初めて受け継がれるのである。

雄勝は古くから神楽や獅子舞が盛んな土地だ。その文化を未来につなげようと住民自治組織「おがつ100年会議」が中心となり、この祭りを手作りで企画した。地域の子どもたちや若手漁師たちも協力し、多くの住民が集まったという。実に素晴らしい。

「おらほ」とは東北の言葉で「俺たちの」「私たちの」という意味である。おらほの伝統芸能を未来へ育て。日日新聞の見出しである。その言葉には、先祖から受け継いだ誇りと、未来へ手渡す責任が込められているように思う。

雄勝の皆さんに心からのエールを送りたい。来年はぜひ現地を訪れ、神楽や獅子舞の歴史と文化に触れてみたいものである。こうした地域の宝を決して廃れさせてはならない。

そして私は、地域みっちゃく生活情報誌を発行する者として決意を新たにした。全国各地には、まだまだ知られていない素晴らしい伝統芸能が数多く残っている。それらを掘り起こし、紹介し、次世代へつなぐ一助となりたい。

地域を愛する心こそ、地域文化を守る原動力である。おらほの伝統芸能。守るのは行政ではない。私たち一人ひとりの心である。Goto

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