今日から5連休です。夜がずいぶん長くなりましたね。
連日、梅雨を思わせるような雨模様もやっと落ち着きました。10月になればスカッとするのでしょうねぇ。同じ雨でも、五月、六月の雨にはどこか希望があります。若葉は雨を吸って色を濃くし、草木はぐんぐんと枝葉を伸ばす。夏へ向かう生命の勢いがある。雨上がりの庭や街路樹には、「さあ、これからだ」と言わんばかりの逞しさが漂います。
ところが秋の長雨は、少し趣が違う。日暮れはつるべ落としのように早くなり、虫の音が深まり、桜の葉はひと足早く枝を離れる。自然は嘘をつきません。暑さの名残を抱きながらも、冬の足音をそっと聞かせてくれる。そこに、何とも言えぬ哀愁があります。
ならば、この季節の愉しみは何か。私は迷わず、読書を挙げたい。我々だけではないですね。
この秋、二人の岐阜出身作家の作品に、すっかり引き込まれました。
まず米澤穂信さんの『黒牢城』。荒木村重と、幽閉された黒田官兵衛のやり取りを軸に、戦国の世の人間の業、疑い、忠義を描いた歴史ミステリーです。NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」とも重なり、なおさら興味深い。
村重はなぜ織田信長に背いたのか。有岡城をめぐる謎を、実に緻密な構成で解き明かしてゆきます。山本周五郎賞を受賞したのも頷ける、骨太な読み応えです。米澤さんの警察ミステリー『可燃物』にも、つい手が伸びました。
もう一冊は、池井戸潤さんの『ハヤブサ消防団』の続編です。池井戸さんといえば『半沢直樹』『下町ロケット』「箱根駅伝」も面白い。企業、組織、金、権力、そして人間の欲を、面白く、熱く描く名手です。今回も岐阜・中濃の山里を思わせる舞台に、都会にはない隣近所の濃密な付き合い、郷土料理、柔らかな岐阜弁が息づきます。
八百津や丸山ダムを思わせる土地の空気も親しく、郷土に生きる者には格別の味わいがあります。肩の力を抜いて、しかし心はしっかり掴まれる。お疲れの方には、まことに良い薬かもしれません。お二人の作品をお薦めします。
古典や、風雪に耐えて読み継がれた良書を読むことは大切です。しかし、面白い小説を夢中で読むことも、同じように尊い。人は本を通して、自分だけでは経験できぬ人生を生き、人の哀しみや弱さ、勇気や狡さを知ります。知識を増やすためだけではありません。人に寄り添う心を磨くために、本を読むのです。
スマホを眺める時間を否定はしません。ただ、秋の夜長の一時間だけでも、画面を閉じ、本を開いてみてはいかがでしょう。喜寿を過ぎても、知らぬ世界に胸を躍らせる。その愉しみがある限り、人生はまだまだ新鮮です。Goto


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