杜氏

季節はずれの話題です。
よい日本酒は、よい水、良い米、よい麹、
そして、よい杜氏と、よい飲み手です。
米の収穫は、秋。酒を仕込むのは、冬。
新酒の搾りたては、新春。酒は、新酒が一番旨い。
初夏を一足飛びの夏気配。
旨くて、飲みやすい冷酒もめっきり増えましたが、
酒は、甘めで、チョッピリ熱燗が良い。
そんな、日本酒党の私には、日本酒の話は、季節はずれ。
友達を集めては、年中酒を喰らい、
青臭い政治談議に熱くなってた20代の後半。
30数年前のこと。日本酒を買う予算もなく、
さりとて、安価な合成の焼酎(サントリーのホワイトリカー)は、すぐに頭が痛くなる。
同級生に、地酒「樽綱」の販売元がいる。彼に「鹿児島で、芋焼酎を飲んだことがある、
多少癖はあるが、それが、なかなか旨くて、おまけに安い。手に入らないか?」と。
鹿児島は焼酎の産地。「取り寄せるなら、一升瓶十本の木枠しか手に入らないよ」
とのこと、それが、今でこそ、何処の酒屋でも手に入る「薩摩白波」。
焼酎ブームなんて、ずーと後の話。鹿児島から取り寄せても
日本酒の合成酒より、二級酒(当時は酒に等級があった)よりも、安い大衆酒。
その「白波」を、お湯で割り(蒸留酒で、度数が35度あり割っても味は変わらない)、
一升瓶をならべ、毎晩のように煽っていました。だから、「白波」通です。
私は広告の仕事に携わっています。
あまり、テレビを見ない、仕事熱心ではない、広告屋ですが、
たまたま、連休に流れたCM。
「白波」のこのこくと香りは、杜氏の腕。と。
ちょっと待った。
杜氏とは、日本酒の醸造を行う際の責任者の役職名。
日本酒の醸造方法は世界でも類を見ないほど、複雑にして、巧妙。
この技術を継承していくのが、杜氏。
だから、よい酒は、季節、材料、そして、良い造り手「杜氏」が必要。
私は、それに、良い飲み手が必要と思ってます。
「白波」を浴びるほど呑んだ、私としては、
蒸留酒に杜氏はおかしい。誇大広告ではないが、理解できない広告内容です。
広告の仕事で、一番悲しいことは、消費者を紛らわせる広告を作ることです。
不況の風は、消費者に売らんかなの姿勢で、乱暴な広告を流します。戒めなければなりません。
私の好きな新聞広告の一つ、薩摩焼酎「白波」
街角の、裸電球の街路灯。その横に年代モノの居酒屋。そこに古びた看板「薩摩白波」。
仕事に疲れた労働者、春夏秋冬の別なく、一日を癒すため。
コップに7対3の「白波」湯割り。グイーと煽る。
なんで、杜氏が入りますか?
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