ブラッドムーン

ひな祭りの夜、天は赤く染まるか?

今日は桃の節句、ひな祭り。女児の健やかな成長を願い、雛人形を飾り、
白酒をいただく、やわらかな日本の春の行事。

あなたの周りに雛飾りはあるか?我が家は長女が嫁ぐと共に姿はない。
なぜ3月3日と重なったのか?桃の節句は、もともと「上巳(じょうし)の節句」。穢れを祓い、災いを流し、春の訪れを寿ぐ日である。

その夜に皆既月食。月がいったん影に入り、そして再び光を取り戻す。
まるで、祓いと再生の象徴のようではないか。

春の気配を待つ宵に、天文学的にも大きな出来事が予定された。
月食は満月の夜にしか起こらない。太陽、地球、月が一直線に並び、
月が地球の影の中にすっぽりと入る現象だ。

なかでも皆既月食は、月全体が影に覆われる。真っ黒になるのではない。地球の大気を通過した赤い光だけが月に届き、銅色、あるいは血のような深紅に染まる。いわゆる「ブラッドムーン」である。

国立天文台の予報によれば、今夜は日本でも観測のチャンスがあるとされている。天候さえ味方すれば、全国でこの神秘の天体ショーを見ることができるだろう。東海地方は雨の予報だ。いけずである。

見え方の時間を記して置く
月が欠け始め:午後6時50分頃
皆既食の始まり:約午後8時04分
皆既食の終わり:約午後9時03分
月食の進行全体:午後10時頃まで観察可能

考えてみれば、不思議なことだ。
我々は日々、足元の仕事に追われ、数字に一喜一憂している。
しかし、頭上では何億年も変わらぬ天体の運行が、寸分の狂いもなく続いている。それを計算できることに敬服するのだが。

月は黙して語らぬ。
だが、その静かな赤い光は問いかけるかも知れぬ。「あなたは、自らの軌道を外れていないか、政道を歩んでいると天地に誓えるか」と。

地球の影に入ることは、不吉でも何でもない。やがて月は再び光を取り戻す。
欠けても、隠れても、必ず満ちる。これが自然の摂理だ。

人もまた同じではないか。
逆境に沈む時があっても、それは永遠ではない。影の中にある時間こそ、次に輝くための準備期間である。こう書くと格好良過ぎるか。ちと恥ずかしい。

ひな祭りの夜。
もし雲が邪魔せねば、この地方は覆われそうだが。しばし日常の喧騒を忘れ、仕事の手を止め、夜空を見上げげるのも一考。宇宙の壮大なリズムに心を重ねるひとときは、きっと日常の尺度を少しだけ広げてくれる。

春はもうすぐそこだ。
赤く染まる月を見ながら、新しい季節への覚悟を整えたい。朝っぱらから妙に感傷的になっている。私は月を愛るのが好きだ、今夜は天体ショーに浸るか。雲が覆っていても。白酒ならぬ燗酒を盃に満たして。Goto

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