市井に生きる

私は泣かない、屈さない・・・・・。
このテーマ。何度かブログで書こうかと思っていましたが。そこまでは酷くないだろう。検察の事件処理は正当で、間違いはないのではないかと、心のどこかで信じていたものですから躊躇していました。
でも、高齢の認知症患者二人の爪を深く切り出血させたとする傷害罪で、懲役6月、執行猶予3年の判決を受けた看護師が二審で無罪となった裁判理由の報道を知って・・・・書こうと決めた。
裁判官は「故意につめをはいだ」との供述につて「被告の真意を反映せず、捜査官の意図する内容になるよう押し付けられたか、誘導されたものと疑いが残る」と述べ、調書の任意性に疑問を示し、信用性を否定した。
この判決理由で最も注目すべきは「捜査官が意図する内容になるように押し付けた」の部分です。検察は、あらかじめ事件のストーリーをでっち上げ犯罪を仕立ててしまう点を裁判官が糾弾したことです。
文芸春秋・・・・10月号に掲載された厚労省局長村木厚子さんの手記「私は泣かない、屈さない」を是非読んで頂きたいと思います。私は・・・警察権力に対する激しい憤りと、彼女の強靭な生き様、そして、彼女を取り巻く家族と人間関係に心よりの敬意を覚えました。
ご存知の方が多いと思いますので事件の概要は省きますが。広告代理店が絡んだ障害者の特権を悪用した郵便料金詐欺で、身に覚えのない虚偽有印公文書作成・同行使に問われた事件です。
本文では、爪切り事件とまったく同様に、検事がストーリーをでっち上げ、彼女をなだめたり、すかしたり脅したりしながら、検察の都合のよい調書を作り上げていくさまがつぶさに描かれています。
・・・独房に閉じ込められ、連日、自白を強要されれば、余程、強靭な精神の持ち主でなければ、犯罪者に仕立て上げれれてしまいます。
「残念だけど、検察の取り調べは公平じゃない。裁判官と言うレフリーもいない。弁護士も付いていない。取り調べ室は検事の土俵にいるんだと思いなさい」だとすると、「やらなきゃならないのは、負けてしまわないこと。やってもいないことを「やった」と言わないこと・・・・それしか目標を作らなかった」と。
恐ろしい限りです。取り調べの可視化の必要性を感じます。
これらの事件。看護師も公務員も特別な職業ではありません。この国で、真面目に、一生懸命に生きる私たちと同じ市井の人間です。それが、ある日突然・・・犯罪者に仕立てあげられるのです。
それも・・・自分の国の権力によって。
手記の最後に・・・村木さんはこう綴ってます。「裁判を戦うのは凄く難しい。気持ちが折れないように。健康であること。いい弁護士に恵まれる。自分の生活と弁護費用を賄える経済力がある。家族の理解と協力が得られる。この5つの条件が整わなければ戦えない」
だから・・・検察は間違わないで欲しい。予断を持たない。冷静で丁寧な捜査を願いたい。そして、間違いがあってもすぐに軌道修正できる組織であって欲しい」と。
市井の我々に、検察がわなを仕掛けるようなことはないでしょう。しかし、日常生活をしていても犯罪がでっち上げられ、捜査官の意図で犯罪者に仕立てられる可能性は誰にもあります。
そのことも、覚悟して生きていかなければならないのが、市井であることも知っておいた方が良いと、二つの事件から学びました。                              Goto
追伸
文芸春秋に掲載された村木さんの手記は・・無罪判決が出る前に書かれたモノです。

コメント

  1. Goto より:

    高知に行ってきました。
    地理的に閉鎖経済何でしょうか?繁華街は意外とシャッターが下りていませんでした。早朝に高知城を一周、三の丸まで登りましたが、立派なお城と感動しました。
    村木さんの話題は出ませんでしたが。彼女の精神は、自由民権運動を先駆けた高知の風土にあるのではと思いました。彼女は高知の英雄です。
    それにしても、後先も考えず、中国漁船の船長を逮捕したり・・・普天間基地問題でアメリカとの関係をこじらせたり・・・日本外交はどうなっているんでしょうか?
    検事が遊んでて証拠を改ざんするなんて、国の体をなさなくなってきました。国民の平和ボケが原因だと思います。
    世界はもっとしたたかで、厳しいと思うのですが。ブラジルは如何ですか。   Goto

  2. ブラジル龍馬 より:

    2月に一時帰国した際に、後輩から村木厚子さんは、西村厚子さんだと聞かされて驚いたことでした。
    高知の私立一貫高校から高知大学に進んだ真面目な後輩で、キャリアとしては珍しい経歴の持ち主です。
    やっと無罪が言い渡され一件落着かと思いきや、今回の主任検察官逮捕報道にまたビックリ。
    一体日本の国はどうなっているのかとため息が出ます。