若者よ世界に羽ばたけ・・・

ガリバー旅行記に日本が登場します。

最近驚いたことがあります。ざっくりですが・・日本の若者で、
パスポートを持っているのは2割だそうです。若者とは大学を卒業して
社会人になって10年程度の人です。(20代から30代半ば)

8割近くの若者がパスポートを作らないってことは、海外に興味がないのか、
行く費用が捻出できないのかです。コロナだったからとか、円安でとても行けないから必要ないとしたら残念なことですが、それはまだ多少は海外にとの意欲が残っている。

でも日本で暮らすに不自由がない。なぜ、わざわざ海外に行かねばならないのか?大概のところはわざわざ行かなくてもネットを開けばわかる。そんな内向きの姿勢が理由だとすれば、この国の行末が案じられます。

あなたはガリバー旅行記ってご存知ですか?
1725年(300年前)英国の聖職者、ジョナサン・スウィフトが書いた。
第一次産業革命の始まる少し前です。日本なら江戸時代・八代将軍・吉宗の治世です。

あらすじは、主人公のガリバーが異国に憧れ、船医として航海へ。最初に
漂流したのは小人の国。(第一部)次に訪れたのが巨人の国。(第二部)
訪問先で手厚いもてなしを受けたり、いじめにあったり・・・世界には色んな国があって、ワクワクする。我々が知っているガリバー旅行記は、だいたいがここまでです。

しかし、旅行記は4部まであります。
第3部は「ラプータ」空に浮かぶ島に辿り着く。
その国は、数学や科学が発達し学問が重んじられる知的な国です。
人間のサイズは普通だが奇怪な振る舞いを通して、やや屈折した社会を描き出します。

そして、第4部。高い知能を持ち理性を重んじる馬「フウイヌム」の国を訪れます。彼らは悪徳や野蛮な面を持つ人間に似た「ヤフー」を家畜にしており、ガリバーはヤフーの一種で賢い存在として扱われます。

3部・4部をどう読むかはそれぞれですが・・・
3部の奇妙な人たち、「正しいと思ってやっていることが、生きることをどんどん窮屈にしていく」その姿って、ITの発展に右往左往している現代人に似ている。

4部のフウイヌムは一見正しい存在と思えるが、人間らしい愛情や共感する力を持っていない。人間の理性的なところだけを突き詰めると、こんな感じになるのではないか。ガリバーは4部で人間不信に陥る。それをどう捉えるか読む人の判断だと、スウィフトは突きつけています。

300年前に書かれたのですが、3部では「ラプータ」から英国の帰る途中、
鎖国真っ只中の日本に立ち寄ります。「イェド(江戸)」に赴き「将軍」(帝)に面会。踏み絵もやらされるが「ナンガサック(長崎)」から出国します。

ガリバーの数ある訪問先で、実在する国は日本だけ。
英文学の研究者は18世紀の初頭、20年間にロンドンで刊行された書籍のうち200点以上に「日本」という言葉が載っていて、当時、日本への関心が一定程度共有されたから登場したと分析しています。

私たちはヨーロッパを一口にEUと括りますが、
13世紀にマルコ・ポーロが「東方見聞録」で日本を紹介し。
1600年にウィリアム・アダムスが来日、日英の交流が。
ドイツの医師エンゲルベルト・ケンペルは1690年から長崎・出島に滞在、
日本資料を集め1727年に「日本誌」を出版しています。

そうなのです。彼らは、何百年も前から広い海原を見つめ、海の先に何があるか。そこに興味を持ち、海に踏み出したのです。ガリバー旅行記の3部に登場する日本は英国人たちが求めてやまない神秘の国だったのです。

ガリバー旅行記の一面を披露しながら日本とEUの違いを際立たせようと思っているのではありません。日本の若者たちのこの内向きな姿勢が続くことを恐れているのです。

何百年後にガリバー旅行記の5部が書かれるとしたら、ガリバーが再び訪れた日本という国は、地球が小さくなって、誰もが世界を行き来しグローバル化している時代に、内に閉じ籠り、まるでサンドバックのように中国人や米国人に、ひたすら殴り続けられている主体性のない奴隷のような人種の変な国だと表現されるのではないか。

若者が海外に羽ばたき見聞を広めようとしないことと
ガリバー旅行記が2部までしか一般化していないのがダブります。Goto

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