腸から太りにくいカラダづくり?
新聞を捲っていて思わず手が止まった。3月30日付の朝日新聞。大胆なレイアウトの全面広告である。「朝日新聞を読むという習慣を続けられている、あなたなら、この新しい習慣も続けられるはず」
なるほど、面白い。実に面白い。
広告とはこうでなくてはいかん。読み手の“日常”に切り込み、そこに新たな行動を滑り込ませる。実に巧妙な一手である。
人間は習慣の動物である。
若い頃、へべれけに酔っ払っても必ず自宅に帰り着いた。あれは帰趨本能などという高尚なものではない。単なる習慣である。身体に染み込んだ行動は、意識を超えて人を動かす。
かくいう私も、今や夜はからっきしダメだが、朝だけは強い。4時には目が覚める。古典に少し目を通し、ブログを書く。新聞を捲り、ウォーキングに出る。ゴミを拾い、ラジオ体操をする。忙しいのではない。習慣が私を動かしているのだ。ボケ防止のためでもあるが、それもまた良しである。
さて、ここで考えたい。
「習慣」と「癖」は似て非なるものだ。習慣とは、意志を伴い、自ら選び、積み重ねてきた行動である。一方、癖とは、無意識に繰り返される、いわば“放置された行動”である。
良き習慣は人生をつくる。
悪しき癖は人生を崩す。
「なくて七癖」とはよく言ったものだが、どうでも良い癖なら放っておけばいい。しかし、健康を害する癖だけは、断じて改めねばならぬ。
さて、件の広告。
新年度から「腸から太りにくい身体づくり」をサポートする、ヨーグルト習慣を提案している。発想は良い。だが、ふと思う。朝日新聞の読者層を、どこまで理解しているのか。新聞購読者の多くは高齢層だ。
その方々に「新しい習慣」を提案するのは、決して容易ではない。しかも、「腸から太りにくい」という訴求、その根拠は紙面からは見えにくい。
私は30年、ヨーグルトに果物を入れて毎朝食べている。りんご、バナナ、みかん、いちご。健康かと言われれば、そこそこ元気だが、メタポは健在だ。つまり、この広告が言うほど単純な話ではない。
結論。これは「ヨーグルトを食べましょう」という広告であり、「新聞を読む習慣」とは直接関係はない。
だが、それでいいのだ。
広告とは、時に飛躍するものだ。
論理の継ぎ目をあえて曖昧にし、イメージで人を動かす。それが広告の妙味であり、面白さでもある。
何より、凋落著しい新聞業界に、これだけの大型出稿をしてくれたことに、私は一人の広告人として感謝したい。広告は媒体とともに生きる。媒体が元気でなければ、広告もまた力を失う。
せめてもの願いとして、朝日新聞の関係者には、このヨーグルトを食べる習慣を身につけていただきたい。腸内環境が整えば、紙面ももう少し柔らかくなるかもしれない。これは冗談だが、半分は本気である。
最後に。
私は広告の仕事に携わる者として思う。
どんな仕事も、命懸けであれ。一枚の広告に魂を込める。一行のコピーに心血を注ぐ。その積み重ねが、人の心を動かし、世の中を少しだけ良くする。
習慣とは、命の使い方である。
今日もまた、新聞を捲る。
それが、私の生き方だからだ。Goto


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