一客一亭と鍋。
こう冷えてきますと、鍋ですね。
昔は、昔といっても相当昔。二十代の頃。鍋といえば、かしわ(鶏すき)ばかりでした。
この地方は、名古屋コーチンをはじめ、岐阜美濃の古地鶏など、脂身が多く、肉がしっかりした旨い品種が多い。昔は、そんな肉の味までは考えてなかったが、かしわは安かった。(今も安価だが)
それに、料理が簡単。白菜とねぎなど野菜をきざんで放り込めばよい。しいたけまであれば、最高。
炬燵の上にガスコンロ。気の置けない仲間達と、白波の湯割りを煽りながら鶏すきを突いたもんです。
別段、威張った話でもないんですが、この頃は、焼酎も市民権を得てますが、30年以上前に、岐阜で、薩摩白波を木枠で一升瓶10本取り寄せて、飲んでいたんです。時代の先取りだったと思いませんか?
と、言いたいんですが?学生時代、熊本の八代に二ヶ月滞在したことがあり、その折に、安くて、味のある芋焼酎を知ったのです。だから、酒卸問屋の同級生に取り寄せただけです。
茶懐石に日本料理の献立に欠かせない八寸があるのをご存知ですか?
主客が酒の献酬をする際の取り肴を約24cm(八寸)四方の器に盛って出す料理です。
八寸の心得は、一人の客にもてなす。一客一亭。二人だけでしみじみ酌み交わすひと時のためにあり、機微に触れた話に味が出てきます。
で、鍋ですが。若かりし頃から、鶏すきに始まり、牛や豚は勿論、カキ、蟹を始め、高級なものでは九絵(九州ではあら)。ふぐなど。美味しい鍋をわいわいがやがや、突き合ってきましたが。
それはそれで、冬の楽しみですが。最近では、こんな鍋も好むようになりました。
八寸の湯豆腐鍋です。(いやいや、八寸に湯豆腐があるかどうかは知りませんが。私が勝手に八寸の湯豆腐鍋と命名しているだけですが)
料理は至ってシンプル。土鍋(八寸)に昆布(利尻がよい)を敷いて、小ぶりの七輪に乗せ、絹ごしの豆腐半丁を入れるだけ。勿論、コストもお値打ち。一人前ですから、突きあうことはありませんが。
それを二鍋作り。酒の肴に、友と二人、静かに酌み交わし、語り合う。
冬、鍋を楽しむ。至福ですね。
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