作家魂

恋もしない物欲もないそんな世代に私小説が書けるのでしょうか?
瀬戸内寂聴さんが卒寿(90歳)の終わりの出来事として雑誌「群像」に8月号から私小説「死に支度」の連載を始められたそうな。「小説は何をどのような方法で書いても良い。明日死ぬかも知れない年齢になってそう思う」と作家として達観した発言をしておられます。作家魂ですね。
その作家魂の発露として、秋に刊行される長編(この年齢で長編を書くんですから・・)「燗」(らん)では80歳を前に自殺を遂げた女性の奔放な性と生を振り返る作品。愛欲の底知れなさを捉える筆致は冴え冴えとして、しかも壮年期と変わらず生々しいとの評。(読売新聞8/20付・文化欄)
「年をとっても、若い人と変わりません。寂聴庵にも、70代、80代から恋の悩みがたくさん寄せられます。出家していなければ、わたしも同じように苦しんだでしょう」とあけすけ。この31日から映画「夏の終り」が封切られます。原作は寂聴さんの同名のベストセラー。
改めて寂聴さんの奔放な生き方を紹介するつもりはありませんが「小説書くことで救われたい。その一心でした」と「夏の終り」執筆時を振り返りながら、どうにもならない嫉妬や憎悪、心の荒涼、ドロドロの人間関係から一歩踏み出すには・・・・書くしかなかったと・・・
毎日新聞「オピニオン」のページ「記者の目」に「現代作家気質」と題して「作家として生き残っていくためには、自らの欲望、好奇心をギラつかせなければいけない。我欲をいつも前に出し、引っ張てもらうことが必要。品良く落ち着いたら作家は消えます」と渡辺淳一さんは直木賞選考委員会で作家魂を披瀝。
直木賞作家浅井リョウさん「平成生まれの僕たちには物欲がない」欲望をギラつかせることもなく、作家魂を揺さぶることもない、我欲を全面に出すこともない。そんな、生き方をすればネット上で炎上・・・奔放な発言や振る舞いをすればやり玉にあがってしまうと、まったく別の作家像を・・・
そんな、若い作家に「人間が描けていない」との批判の声もありますが、卒寿の寂聴さんが考える、年をとっても若い人と変わりません。の若い人などもういないし、米寿の渡辺さんのギラギラと好奇心をたぎらせる若い人もいないのを、エバーヤング達は知らねばなりません。
作家って凄まじい生き様出なければと思っているのは、凄まじい生き方をしている作家だけ。作家魂も時代と共に変遷するのだと認識する次第です。Goto

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