ワインとフルマラソン

あの手この手で、酒の需要を伸ばそうと……
「ボージョレ・ヌーボーの解禁日」
その意味を理解したのは……30年ほど前です。
フランスのドゴール空港。当時です。今は知りませんが。
エール・フランス航空って、実に不遜な航空会社で……
乗客を客とも思わぬ振る舞い。イスラエルベングリオン空港から、
ドゴール空港をトランジットして成田空港への帰路時の話です。
成田行きのエール・フランス機、何の説明もないまま、10時間後にしか飛ばぬと。
「えっ。どうなっているのだ」と問い合わせても、暖簾に腕押し……待つしか方法がない。
午前0時を回った空港。突然何が起こったか。閉まっていた店々が一斉にオープン。
なんだ、どうしたと驚いていると、同行の仲間から「何だか知らないがボージョレ・
ヌーボーというワイン」が解禁日なって、大盤振る舞いが始まったと。
「オマエも店に行って飲んでこい」と。そうかとノコノコと出掛けてみた。
トランジットの人たちが並んで「赤ワイン」を受け取っている。
順番が来た。パリジェンヌが……笑顔で「グラスに注いだ赤ワイン」を手渡す。
「俺、赤いワインは酸っぱくて苦手だ、白いのがいい」と訴えると。
怪訝な顔で「首を傾げた」……仲間が「オマエなぁ。今日は赤だけ、白は明日らしい…
赤ワインで辛抱しろ」と。「そうか」と赤で我慢した。
何だか、シャピシャピで美味しいなんて思えない代物が、
私のボージョレ・ヌーボーの初飲でした。帰国後、ワイン通にその話をしたら。
「オマエはバカか、ボージョレってなぁ、そもそもフランスのボージョレ地方の
新酒の赤ワインを……」などと蘊蓄を聞かされ、「白はないのだ」と。
知らぬこととは言え、パリジェンヌの怪訝な顔が……浮かびました。
そんな思い出がトラウマとなり、毎年11月第3木曜日……「ボージョレ・ヌーボー」
解禁日と聞いても、赤ワインは飲むようになりましたが、どうも手がでません。
ボージョレ地方とは違う、ボルドー地方の話ですが。
こちらは、初秋に行われるワインを味わいながらのフルマラソン大会。
発祥は、85年。地元医師ら6人が楽しみながら郷土の魅力を国内外に伝えようと
大会を発案。ブドウ畑を回遊し、コースにある20カ所のシャトーでワインが補給できる。
もちろん、ヌーボーではない。世界最高峰のワイン聖地、赤も白もある。
その一つに1883年、スペインのオーナーからサントリーが買収したシャトーもあるそうです。
日本の酒メーカーもなかなかやるものです。
今年で35回目となるこのユニークなフルマラソン。発案者の意図が実り
世界75ヶ国から約8500名の「のん兵衛ランナー」が集結したそうな。
ワインは酒です。当たり前ですが。酒飲んで走るなんて、健康上の心配はないのか。
主催者曰く「酔っ払っては完走できない。つまり節度ある飲酒を呼び掛ける
啓蒙イベントなんだ」と胸を張る。
「ボージョレ・ヌーボー」が何かも知らなかった30年前。
日本でワインがこれだけ普及するとは思わなかったが、
ワインが日本で飲まれるのは、「ワイン」が手頃で美味い酒だからでしょう。
でも、私は「ボージョレ・ヌーボー」も「ワイン片手のフルマラソン」も
遠慮しておきます。
そうそう。東京五輪マラソン、札幌でいいじゃないですか。
沿道でジンギスカンとビールを楽しみながら選手にエールを送るのも。Goto

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