地域課題に正面から取り組むのが我が社の役割です。
07年・愛知県でのこと。当時91歳、認知症の男性が列車にはねられて死亡した。
JR東海は列車の遅れなどを理由に約700万円の賠償請求を求めて遺族を提訴した。
同居の妻と別居の長男に賠償責任があるかどうかが争点になった。
16年・最高裁は二人に賠償責任はないとの判断を下した。
この結果「認知症の家族が賠償責任を負う可能性はかなり限定された」。
判決では、家族が監督義務者として賠償責任を負う可能性があるのは本人との関係や
日常生活の状況などを元に「特段の事情が認められる場合」とされた。
とは言っても、男性が死亡したケースの話である。
どんな場合でも家族に責任がないと判断されたわけではない。
名古屋地裁は2人に、高裁では妻に賠償責任があるとした。
結果は最高裁判決の通りだが、事故によっては賠償責任を負わねばならないケースもある。
身につまされるのだが、厚労省の統計では認知症患者は2025年に約700万人になり、
65歳以上の約5人に1人になる見通しだと。治療薬や予防方法が確立され、
患者数が減少してくれればと医学の進歩を期待するのだが・・・簡単ではないようだ。
認知症が原因で、誤って他人のモノを壊したり怪我をさせたり、
あるいは徘徊で社会的な被害を加えたりの事故を起こせば
本人や監督する立場の家族に賠償責任が及ぶのは迷惑な話である。
なにせ認知症患者は700万人にも膨れあがるのだ。他人事ではない。
現時点では二つの対策が考えられる。ひとつは民間損保の個人賠償責任補償などに
加入することで万が一に備える。保険大手の個人賠償責任補償は自動車や火災保険に
付帯で加入する商品がある。検討する価値があるのではないか。
もう一つは自治体が損保と契約し、地域の認知症患者を対象に設けている補償制度を
活用することである。名古屋市では20年秋から、認知症と診断され市に予め申請した
市民を対象に個人賠償責任を2億円まで補償する制度を始めた。21年3月末で
約1100人が加入している。神戸市では市の指定医療機関で認知症と診断された人が申請すると
上限2億円の補償が受けられ、これまでに約6000人が加入。「神戸モデル」と言われる。
補償内容・金額や適用条件など自治体によって異なるが、全国で50以上の市町村が
このような仕組みを設けている。居住地の自治体に制度があるか調べてみる価値はある。
いずれもまだ、生煮えではあるが、他人事ではない。
認知症、万が一の事故に対する備えが社会的な問題になるのは遠くない。
地域みっちゃく生活情報誌を通じて「地域を元気にする」ことを目的とする我が社が
取り組む地域課題だと捉えている。Goto
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