米国名門企業・あのカーネギーが創業したUSスチールが日本製鉄に。
私の好きな言葉に「己より優れたる者と働ける技を持つものここに眠る」がある。「鉄鋼王」と称されるアンドリュー・カーネギーの墓石に刻まれた言葉だ。
カーネギーは製鋼業で財をなした。彼は重要な技術革新で鋼を安価に大量生産できるようにした。1880年代・カーネギーの会社は銑鉄・鋼製レールの世界最大の供給業者、日産2000トンの銑鉄を生産するに至った。
1888年・ライバル会社を買収。それに伴って石炭・鉄鉱石の鉱山、685kmの鉄道・大型貨物船を入手。1892年・所有する会社をまとめ、カーネギー鉄鋼会社を創業。膨大な富を得た彼は篤志家として様々な活動を行うのだが・・1901年・鉄鋼業界を統一することで、コストを削減・製品価格を下げ、大量生産し労働賃金を上げることを考え、そのために業界の再編に努め、効率を目指した。そして1901年3月2日・時価総額10億ドルを越える史上初のUSスチールを誕生をさせた。
そのカーネギーが創設した米国史上有数の名門企業「USスチール」を日本製鉄が買収することになった。日本が高度経済成長に突入する・・・そのキャッチフレーズは「鉄は国家なり」・・鉄を治めるものが世界を凌駕できる。戦後の日本経済の狼煙が製鉄業であった。歴史は動く。
USスチールは粗鋼生産量のピークは1953年の3580万トン。世界最大級の鉄鋼メーカーだった。しかし70年代には日本や欧州から輸入品が流入、90年代以降は安価な労働力を背景に韓国や中国勢が台頭。米国勢は劣勢となった。USスチールの22年の粗鋼生産量は世界27位、米国内でも3位に転落、かつての存在感は見る影も無くなっている。どこかに買収されるのは時間の問題だった。
この7月米鉄鋼大手が約70億ドルで買収を提案。全米鉄鋼労組は米鉄鋼大手の買収を支持していたが、日本製鉄が約2倍の買収額を提示。同時に名称変更せず・本社を現地に残すなどを契約に盛り込んだため「米国にとって良い組み合わせだ。同盟国の日本と競争力を高められる」との経営陣は記者会見で述べた。
正式提携はまだだが、労組が外国企業に買収されることに反対を表明。この買収劇が政治問題化するかも知れないが・・・日本側はこの買収で米国での競争力が高まり、米国に保守主義的な政策に左右されない供給網を構築できるメリットがある。このままでは資本力に任せて中国に買収されるようなことになれば、米国の損失は大きい。早晩・労組も同盟国日本の買収を評価するのではないか。
「鉄は国家なり」・・・JAPANASNO1なんて胸を張っていたころを知る人たちはあのカーネギーの鉄鋼会社を買収かと思うのだが、私的には、むしろ、日米の経済はもはや一体化、日本の買収を海外の資本が入ったと騒ぐ方が時代錯誤ではないかと思う。
「己より優れたる人と働ける技を持つ者ここに眠る」と言ったカーネギーは
果たしてこの買収劇をどう思うのだろうか・・・Goto
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