地方自治法改正

想定外を想定することが可能か。それよりも道州制の導入ではないか。

コロナ禍のような非常事態が発生した場合、現行の個別法(災害対策基本法・新型インフルエンザ対策特別法・感染症法・武力攻撃事態法・国民保護法)に基づき対応されている。しかし、これらの個別法で対応できない不都合な状況が次々と発生、その解消のために国会で多数の法改正が繰り返されている。

政府は3月上旬をメドに地方自治法改正案を閣議決定し、国会に提出する。現行の個別法が想定していない事態へ対応ができないのを可能にするのが目的である。柱は自治体に対する国の指示権を創設することにある。日本が急激な人口減少を迎える中、国と地方が新たな協力関係を構築する一歩になればと思う。

そもそもだが1999年・地方分権一括法が制定された。国と地方の関係を「上下」から「対等」の関係に転換した画期的な改正である。今回の改正は非常時に最優先すべきは国民の安全確保だ。だから日本全体の対策に国が責任を持つようにすべきだとする。

改正案を答申したのは第33次地方制度調査会である。大規模な災害や感染症の蔓延など「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」において「国民の生命・身体・財産の保護に必要な措置が的確かつ迅速に取れるように国が自治体に必要な指示をできるようにすべきだとの指摘に基づく。

それが改正案の「非常時の国の指示創設」である。国が主導的な役割を担うことは合理的であるとの考えから、地方分権一括法を「対等」から「上下」関係に戻すことが正しいのであろうか。

1700の自治体大半・人口減少という問題を抱えている。行政機能そのものが対応できるかが問われている。そこそも論であるが、このままの体制で維持できるかどうかも疑わしい状況にある。異常事態に対応ができるとは思えない。だからといって、国の指示創設をすれば解決できるとは考え難い。

敢えて申し上げたい。この改正は省益でしかないのではないか。中央官僚に指示権を与えても「想定外」は解決はできない。それを法的な整備が不十分だからを理由にしてはならない。そもそも中央集権制が崩壊していることによって想定外の対応ができないのだ。それに権限を与えても意味がない。

むしろ、やるべきことは、都道府県に権限を移譲すべきではないか。そして、地方分権を更にすすめることではないか。道州制の導入を視野に入れて。私は思う。制度調査会の答申はわかる。それを鵜呑みにして閣議決定するのではなく、やはり、政治が機能して「この国の未来」地方のあるべき姿を真剣に議論をすべきである。今の個別法すら十分に活用できていないのが現状なのだから。

非常事態の大義を振り翳して早計に地方自治法の精神を歪めてはならない。Goto

コメント