古酒

長期熟成管理され、ひね香のない酒・・・・

もう何十年も前の話です。35年にはなりますかねぇ?
イスラエル・最南端の街エイラート市でのことです。
エイラート市はアカバ湾の最北端にあります。
右手前に広がる陸地はエジプト。隣接するのがヨルダン・
その先がサウジアラビアの4カ国が重なる国境銀座です。

その砂浜で海水浴、灼熱の地です。喉が渇いたと砂浜にある売店に。
飲み物でいちばん安いのはビール。その次がワイン。そしてウィスキー、
ウォーターはその次でした。酒よりも水の方が高い。びっくりしたのですが、
そこに、日本酒「沢の鶴」が置いてあるじゃないですか。

それも色がウイスキーよりも濃いキャラメル色に。
もちろん、日本酒を飲む人など誰もいない。だから何年前に製造されたか
わからない。10年以上かなぁ?でも物好きな私です。一升瓶を手にして一杯飲んでみるかと。その味たるや飲めたものではなかった。当たり前ですよねぇ。

日本酒って、そもそもが一年魚のように、秋に収穫した米で、
冬に醸造・火入れして瓶詰めされ、一般的には7月〜翌年6月にかけて出荷されます。それを新酒と呼びます。瓶詰めされて2年目以降のものは劣化して味が落ちると言われ、それは古くなった酒で、古酒とは申しません。

古酒に定義はないが、長期熟成酒研究会(そんな組織が)では蔵元で管理されて3年以上貯蔵され、かつ劣化臭(ひね香)がついていないものを古酒とする。
刻SAKE協会では国産米を使い製造履歴がはっきりしていて摂氏10度以下で貯蔵されているものを「古酒」と規定しています。

でも日本酒って、江戸時代までは流通の関係もあったのでしょう。
古酒として楽しまれてきたという。しかし、明治時代になって、
酒を造った時に造石税を課すようになった。日本酒を飲まない、いも焼酎が酒の主流だった大久保利通や西郷隆盛など薩摩の人たちが考えたのでしょうかねぇ。

出荷時に課税される現在と異なり、長期貯蔵すると売れる売れないに関わらず税負担がかかるのを嫌い、蔵元は酒を早く売り切るようになったのだそうです。
それで長期熟成酒(古酒)が消えたそうです。酒は新酒で飲むのが旨いというようになったのは・・・明治以降っていうからびっくりですね。

でです。ビンテージ酒といえば一般的にはワインやウイスキーが連想されるのですが、日本酒の古酒も「常温貯蔵は琥珀のような色がつき、味と香りに重み」が出て、なかなかの味と評判になっています。岐阜には古酒を専門とする白木酒造があります。私も新酒がうまいと騙され続けた派ですから・・・。

手に取って飲んだことがない。なるほど。
古酒っていけるかも知れない。そう思うようになったので、
買い求め、戦火のイスラエルに思いを馳せ、この正月にでも味わってみるかと思
う。古酒の話です。Goto

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